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201.揺れる心 ページ1

「Aさん。」


 私は千寿郎くんに呼ばれて振り返る。


「やはり、ここへ戻ってきてはくれませんか?」


 杏寿郎さんの誕生日から一月ほど経った。



 私は基本的には宿舎に寝泊まりをし、


 仕事がお休みの日は1日煉獄家で家事をして、

 
 夕刻には宿舎へと戻る生活をしていた。


「…ごめんね。」


「僕、正直寂しいです。

 Aさんはもう家族同然ですから…。」


 私は優しく千寿郎くんの頭を撫でた。


「千寿郎くんの負担が増えてしまってごめんね。

 でも、休みの日は煉獄家にも来ているから…」


「…負担などはどうでも良いのです!

 ただ、週に4日は家にいないですし…。」


 少し拗ねている千寿郎くんが可愛らしい。


「そうだ!お昼前に兄上が戻られるようです。」


 杏寿郎さんが…



「私、そろそろ行」



「今日は休みですよね?

 一緒に昼餉を食べたいです。


 3人で一緒に。」



 私はこの顔に弱い。



「うん、分かったよ。」






 


 洗濯物を干していると後ろから声をかけられた。



「今日は来てくれていたのだな。

 この家の家事まですまないな!本当に助かる。」




「杏寿郎さん!?

 お戻りになられたのですね。おかえりなさい。

 足音が聞こえず、全く気づきませんでした。」



「うむ。ただいま戻った。」



 杏寿郎さんは縁側に腰をかけ、隊服の上を脱ぎ始める。



「この頃、随分と蒸し暑くなってきたな。」



「そうですね。少し動くだけで汗が出ます。」



「今日は天気が良いが、すっかり梅雨の時期だな。」



 庭の紫陽花も随分と色をつけてきた。




「家と宿舎の往復、辛くはないか?」


「そこまで遠くはないので…大丈夫ですよ。」


 杏寿郎さんは腕を組んで目を伏せると優しく呟いた。




「…心配なんだ。」




「…はい?」




 そう言うと、彼は眉を下げて微笑みかける。



「君はすぐに無理をする。


 周りには大丈夫と気丈に振る舞うが、


 いつその身体が壊れてしまうのではないかと


 俺はいつも心配なんだ。」





 私は自分の心が分からなくなっていた。


 ハンカチを渡したのは、自分の中でケジメをつけようと


 思ったから。



 どうしても苦しくて、辛くて、


 共にいる時間を少しでも減らしたくて選んだ道。


 あなたへの気持ちへの「別れ」でもあったのに。




 あなたは前と変わらないから…



 また心は揺れてしまう。

202.梅雨の晴れ間の涙→



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます!一気読み嬉しいです〜!勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね!最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして!キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます!! (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます!最高な作品だなんて…幸甚の至りです!またいつでもお越しくださいね。 (5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした! (5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます!感動してくださるなんて光栄です!素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月5日 19時

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