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197.咲かぬ花と知っていても ページ47

「えっ?」


「驚いた顔も可愛いね。

 ちゃんとお話をしたいのだけれど、

 まずはご飯を食べてからにしようか。」


「は、はい。」


 私の頭の中は酷く混乱していて、箸が進まない。

 甘いものを食べて落ち着こうと、

 私はあんみつを口に運ぶ。

 


「Aさん。ここ。」


 吉次さんはそう言うと、

 自身の唇の端を人差し指でトントンっと触る。


「…はい?」


 私が首を傾げると、向かい側から吉次さんが手を伸ばし、

 右手の人差し指で私の口元を拭うと、

 そのまま自身の口へと運んだ。


「あんみつの餡がついてた。」




 "…ん、美味しいな。どうした?"




 私は頬に何かが流れるのを感じて、指で拭う。



「Aさん?大丈夫?」


「…ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってきます。」


 私はハンカチを手にお手洗いに駆け込む。


 深呼吸をして落ち着こう。大丈夫。


 いくら考えたって、彼が振り向くことはない。


 私は自分でしっかり進んでいかないと…。






 その後、会計を済ませ、川沿いを吉次さんと歩く。


 雪を纏った草花は冷えて寒そうだ。


 途中で吉次さんはこちらを向き、

 
 真剣な顔になって私に告ぐ。


「Aさん、先程の話だけど…。」


「…はい。」


「はじめは一目惚れだったんだ。
 
 素直に可愛いなって思った。

 そこで終わるかなと、私自身も思っていたのだけれど、

 あなたの直向きな姿勢や、周りに優しいところ、

 その性格までも愛おしいなって…

 気づいたら、あなたのことばかり考えるようになった。」


 まっすぐな言葉に息が出来なくなる。


 この人となら幸せに暮らせる?


 吉次さんとの未来を描こうと目を閉じてみても、


 浮かんでくるのは…





「吉次さん、あの、私…」


「ははっ。分かっているよ。

 でも少しだけ待って、私に最後まで言わせて。」


 吉次さんは、私の両手を自身の両手で包み込んで、

 まっすぐな瞳で私に告ぐ。



「Aさん、私はあなたのことが好きです。」



 そう言った吉次さんの目からは雫が溢れる。



「…分かっているのですよ。あなたには想い人がいること。


 それでも私はあなたを好きになってしまった。」





「…吉次さん。」





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 杏寿郎との回想

『君が思い出すまで3』147話 噂の甘味処

 ※ 誤字の訂正もしました。

198.導かれるように→←196.男の想い人



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 衣世さん» 苦しいですね…。書いていても辛いです泣 叫んじゃってください〜!! (2021年11月3日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 更新ありがとうございます!杏寿郎ーー!!切ない、苦しいですね(ToT)うあぁぁぁ(TдT)叫ばずにはいられません泣 (2021年11月3日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - akiomiさん» はじめまして。コメント嬉しいです!ありがとうございます。溶けてしまいたいですね…笑 応援ありがとうございます!引き続きお楽しみくださいませ! (2021年11月3日 12時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
akiomi(プロフ) - 初めまして。切なくてどうしようもない気持ちになり、コメントしてしまいました!雪になって、私も溶けてしまいたい笑 続きも楽しみにしております。これからも応援しています! (2021年11月3日 11時) (レス) @page45 id: 15912deccb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - ろろろーさん» はじめまして。コメントありがとうございます!胸を締め付けるようなお話ばかりで申し訳ないです。嬉しいお言葉、ありがとうございます!更新、頑張りますね! (2021年11月3日 10時) (レス) @page45 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年10月23日 12時

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