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194.きつく縫い付けたボタン ページ44

 翌日、私は着替えを済まし、

 居間にいる千寿郎くんに声をかける。


「少しお出かけしてきますね。夕方には戻ります。」


「はい。お気をつけて!」


 私が玄関に向かうと、勢いよく扉が開いた。


「A?出かけるのか?」


 できることなら、今は会いたくない人だった。

 
 稽古着の杏寿郎さんは、


 煉獄家へ忘れ物を取りに来たようだった。



「…はい。

 あ、隊服を取りに来られたのですね。

 以前、洗濯してそのまま杏寿郎さんの部屋に

 しまってあります。」


 この前羽織らせてくれたものだ。

 どこかに引っ掛けてしまっていたのか、

 胸の第二ボタンが取れてしまっていたので、

 予備のものを縫い付けてしまっておいていた。


「今、持ってきますね。」


「ありがとう!

 何着かあるから、ここへ置いていっていたことを

 すっかり忘れてしまっていた!」


 私は慌てて杏寿郎さんの部屋の箪笥を開け、

 隊服を取り出して玄関へ向かう。


「どうぞ。」


「うむ。」


 すると、杏寿郎さんは隊服をまじまじと見て、


 第二ボタンにそっと触れ、優しく微笑んだ。


「…これは、君がつけてくれたのだな。」



「…はい。」


 どうして分かったのだろう。

 私はボタンのことについて話していないのに。



「千寿郎はここまできつくボタンを縫い付けない。


 恐らくだが、君は以前にも

 
 隊服の第一ボタンを縫い付けてくれたことが


 あったのではないか?」



「…あ」



「やはりな。」


「すみません…!きつく縫い付けすぎたでしょうか?」


 私がそう言うと、杏寿郎さんは眉を下げて優しく告ぐ。


「いや、解けぬようにと縫い付けてくれたのだろう。

 
 俺は隊服を着るたびに、そのボタンに手をかけるたびに


 きつく気が引き締まった。


 必ず鬼を滅して生きて帰るのだと。」



 
 杏寿郎さんは、まっすぐ私を見て、

 顔いっぱいの笑顔を向けた。



「A、ありがとう!」




 そんな笑顔ずるいよ…

 ずるいよ、杏寿郎さん…




「いえ!お役に立てて良かったです!

 では、約束があるので…失礼します。」




 このままここにいては


 私は彼から離れられないと思い、



 足早に下駄を履いて外へ出た。






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 第一ボタンの話

 『君が思い出すまで3』 110話 取れないように

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 衣世さん» 苦しいですね…。書いていても辛いです泣 叫んじゃってください〜!! (2021年11月3日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 更新ありがとうございます!杏寿郎ーー!!切ない、苦しいですね(ToT)うあぁぁぁ(TдT)叫ばずにはいられません泣 (2021年11月3日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - akiomiさん» はじめまして。コメント嬉しいです!ありがとうございます。溶けてしまいたいですね…笑 応援ありがとうございます!引き続きお楽しみくださいませ! (2021年11月3日 12時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
akiomi(プロフ) - 初めまして。切なくてどうしようもない気持ちになり、コメントしてしまいました!雪になって、私も溶けてしまいたい笑 続きも楽しみにしております。これからも応援しています! (2021年11月3日 11時) (レス) @page45 id: 15912deccb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - ろろろーさん» はじめまして。コメントありがとうございます!胸を締め付けるようなお話ばかりで申し訳ないです。嬉しいお言葉、ありがとうございます!更新、頑張りますね! (2021年11月3日 10時) (レス) @page45 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年10月23日 12時

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