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190.水も滴る ページ40

しばらく止みそうにない雨に

 私は目を閉じてじっと待っていた。



 すると、足音が近づいてきて、私の左隣で止まった。




 同じく雨宿りをしているのだろう。




 私は目を開き、前を向いたまま隣人に話しかける。



「…雨、止みませんね。」


 隣人は雨音で聞こえないのか、返事がない。


「…くしゅんっ!!」


 雨に濡れて冷えてしまったからか、


 くしゃみをしてしまった。


 

 すると、おもむろに羽織をかけられる。



 その羽織は見間違えることのない




 


 炎を想起させるものだった。






 私は慌てて左を向く。



 そこには水を滴らせた杏寿郎さんの姿があった。




「…杏寿郎さん!?」



「びしょ濡れだな!」



 こんな時でも杏寿郎さんは口角を上げ、笑っている。



「なんだ…もっと早く声をかけてくださいよ!」



「ははっ!すまない!」



「羽織、ありがとうございます。

 でも、濡れてしまいますから…」


 そう言って私が羽織を取って返そうとすると、


「羽織はまだそこまで濡れてはいなかったから、

 少しはあたたかいだろう。かけておくといい。」


 そう言って、杏寿郎さんは私を包むように

 羽織をかけなおす。



 その雨に濡れた手が、何とも色っぽくて


 私は思わず目を背けた。



「…どうした?」


「…いえ、何でもありません。」


 
 ちらりと左を覗き見ると、


 杏寿郎さんが目を伏せて立っている。


 髪は少し濡れ、顔は水が滴っていた。


 そのような姿さえ、美しく感じる。



「…綺麗。」



 思わず口から言葉がおぼれ落ちる。



 杏寿郎さんはこちらに顔を向け、驚いた表情をした。



 私には雨が屋根に落ちる音だけがこだまする。




「…A?」



 突然ふらっと身体が傾き、


 私がその場へ倒れ込みそうになるところを


 杏寿郎さんが抱き止め、声をかけた。



「…大丈夫か?


 ひどい熱じゃないか!いったいいつから?」


 熱…?


「仕事中から、なんとなく頭が働かなくて…。」


「…無理していたのだな。」


「大丈夫です。自分で帰れますから…」


「馬鹿なことを言うな。」


 杏寿郎さんはそう言うと、隊服の上を脱ぎ始めた。


 上はシャツ一枚になった杏寿郎さんは、

 
 着ていた隊服の上も私に羽織らせる。

 
 

 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 衣世さん» 苦しいですね…。書いていても辛いです泣 叫んじゃってください〜!! (2021年11月3日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 更新ありがとうございます!杏寿郎ーー!!切ない、苦しいですね(ToT)うあぁぁぁ(TдT)叫ばずにはいられません泣 (2021年11月3日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - akiomiさん» はじめまして。コメント嬉しいです!ありがとうございます。溶けてしまいたいですね…笑 応援ありがとうございます!引き続きお楽しみくださいませ! (2021年11月3日 12時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
akiomi(プロフ) - 初めまして。切なくてどうしようもない気持ちになり、コメントしてしまいました!雪になって、私も溶けてしまいたい笑 続きも楽しみにしております。これからも応援しています! (2021年11月3日 11時) (レス) @page45 id: 15912deccb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - ろろろーさん» はじめまして。コメントありがとうございます!胸を締め付けるようなお話ばかりで申し訳ないです。嬉しいお言葉、ありがとうございます!更新、頑張りますね! (2021年11月3日 10時) (レス) @page45 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年10月23日 12時

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