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182.夜空に咲く花 ページ32

とうとう楽しみにしていた


 花火大会の日がやってきた。


「A、支度できたら外に出ておいで。」


 杏寿郎さんは襖越しに話しかける。


「あ、はいっ!もう少しだけ待ってください!」


「はははっ!焦らなくて大丈夫だ!」


 千寿郎くんと一緒に買いに行った浴衣に袖を通し、


 唇に薄く紅をひく。


 杏寿郎さんを待たせてしまっているため、


 慌てて下駄を履いて玄関を出ると、勢い余って


 転びそうになったところを彼に抱き止められる。




「危ない!!…大丈夫か?


 君って人は本当におっちょこちょいだな。」



「…すみません。」



 日が傾き、薄暗くなった外は、


 街灯の灯りが優しく私たちを照らしていた。


 そっと身体を離すと、杏寿郎さんは私をその瞳に映した。




 一瞬だけ、ほんの一瞬だけ目を潤ませたように感じた。



 しかし、すぐに優しく微笑んで私に告ぐ。




「とてもよく似合っている。美しいな。」


 向かい合って言われると、嬉しくも照れ臭くて…


 私は俯いてしまう。


「…なぜ下を向く?

 もっと顔を見せてはくれないのか?」



「…照れ臭いです。」



 私がそう言うと、杏寿郎さんは眉を下げて

 困ったように小声で呟く。



「君のそういうところも…愛おしいんだ。」
 


 杏寿郎さんは私の手を引いて


 花火がよく見える場所へと連れて行ってくれた。



 そこは花火大会の会場から近い土手沿いで、


 穴場スポットなのか、人はほとんどいない。


 私たちが着いたすぐ後に、花火が上がり始めた。


 夏の夜空に大きく咲いた花は

 
 一瞬にしてその美しさで人の心を掴み、


 瞬く間に消えていく。


 
 会場から近いからか、花火が打ち上がる度に


 ドンっという音が心臓に響く。



「…綺麗ですね。」



「本当だな。」



「こんな穴場よく見つけましたね。」



「良いところだろう?

 行きつけの蕎麦屋の店主に教えてもらったんだ。」



 花火の光に照らされる杏寿郎さんの横顔を盗み見る。


 本当に綺麗な横顔…


 杏寿郎さんの瞳に映る赤、黄、緑の光が


 キラキラと輝いている。



「A…」


 花火の打ち上がる音で、


 杏寿郎さんの声が聞き取りづらい。



「…はい?」



 杏寿郎さんは身体をこちらに向ける。


 


 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 衣世さん» 苦しいですね…。書いていても辛いです泣 叫んじゃってください〜!! (2021年11月3日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 更新ありがとうございます!杏寿郎ーー!!切ない、苦しいですね(ToT)うあぁぁぁ(TдT)叫ばずにはいられません泣 (2021年11月3日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - akiomiさん» はじめまして。コメント嬉しいです!ありがとうございます。溶けてしまいたいですね…笑 応援ありがとうございます!引き続きお楽しみくださいませ! (2021年11月3日 12時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
akiomi(プロフ) - 初めまして。切なくてどうしようもない気持ちになり、コメントしてしまいました!雪になって、私も溶けてしまいたい笑 続きも楽しみにしております。これからも応援しています! (2021年11月3日 11時) (レス) @page45 id: 15912deccb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - ろろろーさん» はじめまして。コメントありがとうございます!胸を締め付けるようなお話ばかりで申し訳ないです。嬉しいお言葉、ありがとうございます!更新、頑張りますね! (2021年11月3日 10時) (レス) @page45 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年10月23日 12時

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