君が思い出すまで4【煉獄杏寿郎】

176.焦らされる心 ページ26

杏寿郎さんは黙ったまま私の手を引いて、


　静かに自室の襖を開けた。




　杏寿郎さんの部屋に入ると、壁際まで連れて行かれ、


　向き合ったまま彼は私を色っぽい瞳で見つめる。


　私はそれが恥ずかしくて、照れ臭くて、


　つい、杏寿郎さんの胸元に目を落とす。



　浴衣の隙間から見える鍛え抜かれた胸元に


　鼓動が早まるも、少し触れてみたくて…


　私はおずおずと杏寿郎さんの胸元に手を滑らせた。






　すると、触れていた右手を彼に掴まれてしまった。





「こら…」
　




「…あっ、すみません。」



　私が手を下げようとした時、


　今度は両手を掴まれ、壁に押し付けられてしまう。




「…A。




　惜しいが、今宵は生家だ…。





　あまり可愛い声で鳴いてくれるなよ。」




　
「…こ、声なんて出しませんから！」




「ははっ。そうか。



　その言葉、忘れてはいけないぞ。」




　そう言うと、杏寿郎さんは不敵な笑みを浮かべた。




　両手を壁に押し付けられたまま、

　杏寿郎さんは私に顔を近づける。


　口づけをされると思った私は目を閉じてみるが、


　一向に唇が触れないので、おもむろに瞼を開ける。


　すると、もう唇が触れそうな距離で


　妖艶な表情の杏寿郎さんが目に映ったので、


　それならば…と、私は自分から口づけをしようと


　唇を近づけた。


　しかし、そうすると杏寿郎さんは


　顔を引いて、口づけさせまいとしてくる。


　私がもどかしくて困った顔をしていると、


　再度顔を近づけてきたので、今度こそは…と、


　唇を寄せると、またかわされてしまった。





「…杏寿郎さんの意地悪。」




　堪らなくなって、私がそう言うと、


　
　いきなり深い口づけが落ちてくる。




「…んんっ」



　いつもの優しい口づけから始まるようなことはなく、




　今回は貪るように何度も何度も口づけをする。




「…んっ、きょ…じゅろう…さん？」



　きつく指を絡めて離さない。


　
「…まだ…話せる余裕があるんだな？」



　杏寿郎さんはそう言うと、私の首元に口づけをし、



　首筋をなぞるように舐める。



「…んっ！あっ」





「ん…？声を出さないのでは無かったのか？」




「…出して…いません…」



　私がそう言うと、杏寿郎さんは一度口づけをやめて


　私の目を捉えて告ぐ。





「嘘つきには…









　罰が必要だな。」


　
　
　

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