黄昏の記憶 (ページ6)

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3.海水ページ6

｢今年度から理科教員になりました甘味良太です。よろしくお願いします。｣

そういうと、熊稲先生は、優しそうな雰囲気で、
｢あら、あなたが甘味くんね、広川先生からよくお話を聞いてるわ、よろしくねー、
あっ、そうだわ、事務員さんがあなたの事を懐かしがられてて思い出話をしたいって言ってらっしゃったから先に事務室に行ったほうがいいわ。やらなきゃいけないことは後で話すから。｣
と言って忙しそうにノートやプリントの添削を始めた。

忙しい先生方が多いな…、と思いながら職員室を出ようとすると、広川先生に呼び止められた。

｢実は、さっきまでいろんな時にしゃべれる"ネタ"を探してたんだけど、甘味くんは真面目だし、ドジらないし、やっぱりボロが出ないねー｣

この一言で、僕は広川先生がどういう人なのか、かなり思い出した。
広川先生は、先生方のおもしろい話(ドジったことや、変なところ)を生徒達に遠慮なくしゃべって、そして生徒達の前でその先生をいじる…。

言わずもがな、いじられキャラ化した先生は威厳をそれなりに失うため、授業が少しやりにくそうだった。
広川先生は、雑談も授業もおもしろいので、ほとんどの生徒から人気だった。

が、今の僕にとっては恐ろしい悪魔のようにしか思えない。

｢そういやー、朝見先生のことは覚えてるかい？｣

｢朝見先生……すみません、覚えていないです。｣

｢そうか…｣

広川先生はそう呟いて、少し残念そうな表情を浮かべた。

｢あの、もし特徴とか言ってくださると思い出すかもしれないです。｣

広川先生は少し唸ったあと、さらさらと特徴を言った。

｢真面目で怖い顔をしているがいろいろと抜けてて、おっちょこちょいで、ドジで、いつもスーツですぐ鼻で笑う、あと残念なギャグを言う、自称45歳で社会をやってたおっさん。あとファンクラブがあった。｣

そんな濃すぎるキャラクターの先生いたら覚えているはずだが、まったくもって思い出せない。

｢やっぱり思い出せないです。また、思い出したらお伝えします。｣

｢そうか…、ありがとう。｣

広川先生は、ため息をつくようにそう呟いて、どこかへ行ってしまった。