悪魔祓いと召使い 5 ページ16
がちゃ、きぃ。扉の開く音。腰の武器に手をかける。
「き、きんとき……」
だが、すぐに手を拳銃から離した。部屋にやってきたのは身体の小さな少年だ。少年はきんときの名を呼びながら扉を開いたが、窓越しに私達の姿を見て硬直する。
「ぇ、だれ、なに……」
「Nakamu、今日来るって言ってた、助けてくれる人だよ」
長い茶髪で右目を隠しているその少年に、きんときが声を掛けた。よく見ると、少年は顔を腫らしており、鮮やかなスカイブルーの目には涙を溜めていた。私達の存在に動揺し咄嗟に拒絶をしたようだが、きんときの言葉に少し落ち着きを取り戻した。
「ぁ、そうなんだ、びっくりした……」
Nakamuと呼ばれた少年は、そう言いながらも私やシャークんから隠れるように、きんときの方に近づいていく。
「初めまして。私は教会所属悪魔祓いのA。よろしくね」
「おれ! おれはシャークん! よろしくな〜」
出窓の下から挨拶をする。しかしNakamuはきんときの後ろに隠れてしまった。何か小さな声で言っているが、上手く聞き取れない。
「さて、自己紹介もしっかり出来なくてごめんよ。すぐにここを出よう。荷物はまとめてあるね?」
「はい。ぼくたちはいつでも大丈夫です」
偽造した「奇蹟書」を出窓に置いた。これは教会からの奇蹟を通達するもので、理不尽な目に遭う子どもを神と天使が連れていく、という内容の教典をなぞらえている。子ども達の救済を行った証として、その場に残されるのだ。本来であれば、教会の専門機関〈
……どうか、上手くいってくれ。
「さあ、行くよ。怪我は痛むかもしれないが、少しだけ我慢して。ここを出たらすぐに治療するから」
「みんなでいっぱいあそぼう!」
「おれ、あたらしいゲーム考えたからいっしょにやろうぜ!」
Nakamuの瞳から、涙が零れる。その大きな目がきらきらと雪の光を反射した涙で輝く。丸い頬を伝った。
「うん……!」
それを手で拭って不器用に笑って見せた。それを見て、きんときも安心したように笑う。私は二人の小さなトランクを受け取り、Broooockとシャークんが手を差し出す。
そのとき。扉に、扉の向こうに、黒い悪魔が見えた。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください!更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります! (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です!雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください! (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葡萄 | 作成日時:2021年5月13日 17時