１０３公演目 ページ5
翌日の朝、ちょうど街との境にある小さな慰霊碑に手を合わせた。白い石に名前が刻まれた慰霊碑に手向けの白いユリが甘ったるい香りを漂わせていた。
道はアメリカンチェリーの色にも負けない赤黒さで痛々しく当時の面影を残している。罪悪感が私を突き落とす。許されない。許されてはいけない。私は忘れてしまっていたのだ。
人の命を奪うことも生きるためなら仕方ないなんて、人としての尊厳を失ったも同然。私はほんの欠片も優しく無いのに、何故シャークんは私を許したのか。
いっその事私も死を持って償えてしまえたら、それで良かったのだ。それなのに彼は生きて贖罪をしろと言う。これ程意地の悪いことは無い。私には一生罪の意識に苛まれて行く道しか残されていない。
私があの時何もしなかったら今ここにこの慰霊碑は無く、私は異国の軍隊なんかに所属しておらず、彼らは私への対応に困惑することも無くのうのうと生きていた。それが正解だったのだろうか。
……彼らからしたら現状なんか最低の二文字で書き綴られるのだから、正解に決まっている。
私はあのまま復讐代行人をして、彼らの名前など知ることも無く、一生孤独と憂鬱の海に漂っていたのだとしたら。不謹慎だと言われるだろうが、ほんの少しこの現状に対して良かったと思ってしまう。彼らにとってこの運命は悲愴と
その事実は消えないのに目先の幸福ばかり見て、現実逃避もいい所だ。
『貴方の幸せを簡単に奪った私を、貴方は許さないでしょ？』
慰霊碑に声をかけても何も返事はなく、すっかり蔦に覆われたそれに街の人は見向きもしない。時々私を珍しそうに眺めるだけ。
『貴方の仲間達さ、いい奴らばっかりだから、だから私、きっと頼り過ぎてる』
嗚咽が混ざる。残酷で仕方ない。彼らと私が出会うためにはこの人が死を迎えるしか無かった。
『ごめんなさい、ごめんなさっ……』
それ以上その場に留まれ無かった。
私が依頼した相手の使う魔法は禁忌の魔法だった。私は事件現場を直接見た訳ではない。ただ知っているのはその禁忌の魔法が「仇敵は我が胸懐」であること、そしてその魔法が計画通りに使われたこと。
もしどこかで歯車が狂っていればなんて幻想を語ることしか出来ない私は、本当に彼らに見合う仲間になれたのだろうか。
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葡萄(プロフ) - 影猫さん» ありがとうございます！そう言って頂けてとても嬉しいです…… (2020年4月5日 21時) (
レス) id: 63db2b6d1b (このIDを非表示/違反報告)
影猫(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても楽しく読ませて頂いてました。これからも応援しています……！ (2020年4月5日 18時) (レス) id: aed6496161 (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 出水さん» ご心配おかけしてすみません……じきに治りますから大丈夫です！お気遣いありがとうございます。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: 63db2b6d1b (このIDを非表示/違反報告)
出水(プロフ) - 大丈夫ですか！？無理しないでくださいね！いつまでも待つので焦らずに更新頑張って下さい！ (2019年12月29日 0時) (レス) id: 7f5238b76f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2019年12月4日 22時
