よろしい、ならば降参で(笑) 【鬼滅の刃】

陸拾肆 ページ15

炭治郎視点









勝った……

息を大きく吸いすぎた…
肋が…痛い…

俺は長男
俺は長男だ





鼓を使う鬼に勝ち
てる子達が待つ部屋へと向かう


途中金木犀の匂いがしたから近くにAがいるのかもしれない
ドキドキと高鳴る心臓に気づかないフリして清くんを背負い、てる子と手を繋ぐ





玄関の戸を開けると
伊之助と呼ばれる猪の被り物をした奴に善逸が殴られていた

それをAは止め、何事も無かったかのように猪の男と話している
どうして殴るのか、それを至って冷静に聞いていた


それを見て無性に腹が立った
Aではなく猪の男に

そして猪の男は善逸をまた殴る
俺は二年前の事を思い出し
カッと頭に血が上った

気がつけば身体が動いていた
猪の男目掛けて拳を振るったが

俺が振るった拳は猪の男には届かず
Aの腹に当たっていた


顔から血の気が引いた
なんで、どうして、
そんなことを考えていると



『……伊之助に…触れる…な』


光のない目は俺を捉えていた
じっと
俺の全身を突き通るように
視線は突き抜けていく


Aは怒る訳でもなく
苦しむ訳でもなく

淡々と話を進めていた
確かに暴力じゃ何も解決はしない
そのあとは伊之助を宥め、埋葬をしようと言った


俺と善逸は怪我をしているから待機だと言われ、正座をして待っていた

すっかり空が茜色になった頃
埋葬を終えて、山を下る



山を下る途中
伊之助が山育ちと言うから俺は親近感が湧いた
でも伊之助は親も兄弟もいないと
お前とは違うのだと言った
そうかもしれない、俺も親も兄弟も失ったけどまだ禰豆子がいる
禰豆子のおかげでここまで来れている



するとAも山育ちだと言う
でも…凄く……深くて沼のような哀しみと懐かしむような匂いがしたので多分…

親も兄弟もいない
そして友達も今はもう亡き人だと聞いた所で俺は苦しくなった

伊之助は悪くない
でも空気は読んで欲しかった
善逸も気まずい匂いがしている

これ以上の詮索は良くない
だけど



Aのことを少し知れて内心嬉しがっている俺が


少し嫌いになった

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