よろしい、ならば退散で(笑) 【鬼滅の刃】

参拾玖 ページ39

善逸視点







その子の音は不思議だったんだ








今までに聞いた事のないような
ほんとに不思議な音

…いや、ちょっと獪岳と似てる音がしていた
顔も態度も身体も髪型も性別も違うのに

ちょっとだけ…
ほんのちょっとだけ獪岳に…似ていた







俺はこの選別で死ぬと
死ねると思ってここまで来た

毎日好きでもないのに鍛錬させられたり 兄弟子に罵倒されたり 変に期待されたり 死ぬ程山を下って登ったり


泣き叫んで
夜な夜な逃げようとした

でも、じいちゃんは俺を見捨てたりしなかった
そんな優しいじいちゃんに恩返ししたくて
頑張ってみたくて、

ここまで来たけど、
ごめん、じいちゃん…もうダメみたいだ
じいちゃんに貸して貰った刀はいつの間にか刃こぼれしてて、目の前には恐ろしい鬼がヨダレ垂らして俺を見ている



運良く今日まで生き残れたけど
それも今日まで

じいちゃん…恩返し出来ないや、ごめん
獪岳…お前の言う通りだよ、俺はどうせ弱虫だ
何も出来ない、ぐずでノロマな…


それでも最後は女の子に見届けて貰いたかった！
選別開始の時に見かけた黒髪の毛先が紅い女の子…めっちゃ好みだったのにっ！
せめて、せめてその子に会うまではっ

やっぱり死ねない！
あとじいちゃんに帰って褒められたい！
獪岳が頭撫でてもらったみたいにされたい
獪岳はめっちゃ不機嫌だったけど嬉しいって音してた！やっぱ褒められるのはいいよね！

だからだからっだから！！



「いやぁァァァ！！」

俺は生き残るんだ！
せめて悔いのないように！



無我夢中で走っていると
横から心地よい音が聞こえた
こんな状況の中
心地よくて一定の心拍数で優しくて…でも心做しか獪岳の音に似ている様な…？音が近づいて来た

誰だろう、足音は近づき
俺の右斜め横前付近で止まった
そして俺の時間も一瞬止まった様に感じた

俺が今会いたくてたまらなかった女の子がそこにいたのだ
だいぶ走って来たはずなのに息一つ切らせないで心拍数もそのまま




ん？
……女の子！？
ダメだ！こっちに来ちゃダメ

あっ…
その瞬間俺は恥ずかしい事に足を石に引っ掛け転んでしまった
嗚呼……もうダメだ、俺はここで死ぬ
最後にあの女の子を見れて良かった
足止めぐらいにはなれるといいな

でも鬼は倒れた俺を無視して
女の子ま見た瞬間そっちに向かった
どうして？なんでだよ、やめて


逃げて


でも女の子は逃げることなく刀を構え
素早く鬼の間合いに入り

俺が瞬きをした一瞬で
首を斬っていた

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