検索窓
今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:13,620 hit

矛盾 ページ9

「これは、私に任された仕事なんです。貴方が、なんと言おうが私は絵を描きます。文を書きます。」


それが
私の戦場での存在意義だから。

彼の妖しい瞳に睨みを効かせると、彼は鼻で笑った。


「弱っちい目だね。いずれ、君はきっと戦に負けるよ。傍観者じゃなくて兵士になった時にね。」


月光を背後に携えながら
私を見下ろした彼は、絵を返して寄越した。


「ま、その時まで精々見てなよ。ほら、与一が一手を打ったよ。」


その言葉を受け私は
与一さんの方へ向き直り、見た。

槍男の体には幾つかの矢が刺さり、串刺しにしていた。
けれど槍男は倒れない。

与一さんの事だから急所を狙っているはずだが…。
槍男が頑丈なのだろうか。


槍男が与一さんにめがけて槍を振った時、男の両目に矢が連続して刺さった。


これは殺った。


思った。

だが、
男は止まらず、槍に付属していた鎖で
与一さんを締め上げた。


一瞬の隙だった。


それを見たからか、騎兵を片付けに行っていた信さんとエルフ達が
与一さんを助けるため、矢を放ち、そして続けた。

だが、男は倒れない。


それを見て、
私も
と自分の非力も忘れて駆け出そうとすると、腕を掴まれた。
彼だった。


「放して下さい…!」


言うと彼は笑った。


「君は傍観者だろ?ここにいなきゃだめだろ?」


先程の言葉とは裏腹に行動しようとした私を嘲笑う様に彼は目を細めた。

自分でも可笑しい事をしていると思う。矛盾していると思っている。
でも、今はそんな事は言ってられない。
非力でも、女でも、


「奴を、止めないと。」


私がそう言うと、彼は豆鉄砲を喰らった様な顔をした。
彼は私を終始見詰めた後、
やっぱり君は負けるよ
と呟いた。

何を思ったか、私の腕は解放された。

自由になった私は木から降りて、助けに走ろうとした。


その時だった。




荷車の車輪と馬の蹄が地をかけ抜ける音が聞こえた。

何かと思い物音の方へ目を移すと
荷車に乗った数人の男が現れた。


そして、一つの声が
辺りに響きわたった。






「世界が憎いか!!“廃棄物”!!“世界”から棄てられた彷徨う怨嗟!!」

有機物が無機物になった→←傍観者



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
59人がお気に入り
設定タグ:ドリフターズ , 小説
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

猫目石(プロフ) - 再連載、めちゃくちゃ楽しみに気長に待ってますね (2022年2月9日 7時) (レス) @page27 id: 5676b10c1c (このIDを非表示/違反報告)
りのく(プロフ) - 更新お疲れさまです!楽しみな作品なので続きが読めて嬉しかったです。これからもどうかお体をお大事にしつつ頑張ってくださいませ……! (2021年12月20日 13時) (レス) @page27 id: b546459b7a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:陣羽織 | 作成日時:2019年3月26日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。