違うんだよ【狗巻棘】

１６ ページ19

「おまたー····って、狗巻だけ？」

「しゃけ」


教室へ行くと、そこには狗巻だけだった


あれー？真希さんとパンダどこ行ったんだろ


「真希さんとパンダどこ行ったかしらない？」


「おかか」


そっかーしらないかぁ···


そのうち帰ってくるだろうと思い、狗巻の前の席に座る


「よいしょ」


····席に座ったものの、なんか気まずい

私はスマホを出して、適当に触る


あー、釘崎とどっか行こうって約束したよね


どこにしよっかなぁ、とスマホを見る


「···たかな」


スマホを見ていると、狗巻に話しかけられた


「どうしたの？」


「たかな、」


狗巻は、私の足を指差した


あぁ、怪我ね


「大丈夫大丈夫。硝子さんに治してもらったからバッチし治ってるよ」


少し痛む足を動かして元気アピールする


すると、狗巻は眉をひそめた


狗巻は私の手をとり、いつものように、掌をなぞった


『ア イ ツ と な に が あ っ た の』


····アイツ。きっと、あの特級呪霊のことだろう


「···なんにもないよ」


「おかか！！」


はじめて聞く狗巻の大声に、ビクリと肩が跳ねる


「お、おかか」


驚いた私をみて、狗巻は申し訳なさそうに呟いた


「ははっ、いいよ。大丈夫」


軽く笑うと、狗巻はホッとしたように息をはいた


···狗巻は優しいよね、言わないけど


もちろん、真希さんやパンダも優しい。だけど、今の私は、そんな狗巻に心を許してしまって


「····聞く？私の話」


「····しゃけ」


迷ったようだけど、しっかりと頷いた狗巻


私は意を決して、口を開いた


「─────私がね、五歳くらいの時の話。まだ呪眼が使えることも、呪霊がなんなのかも理解していなかった時の」

１→←１５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す