TRIGGER ページ17
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組織からの侵入者を取り逃したあの日から三日後の夕方頃。
Aは愛車を走らせ、降谷が拉致された今はもう使われていない倉庫へ向かっていた。一人の協力者と電話を繋いで。
「…策はあるよね?」
「あぁ。お前の考えている策と同じものがな」
そう、赤井と共に。愛車の後ろに赤いマスタングが付いてきていることを確認して、Aは目を細めて笑った。
「それは…心強い」
人通りのない山道を猛スピードで急カーブを切って走るAを、赤井は何か恐ろしいものを見ているように感じた。
まぁ、それを追いかけている赤井も相当だと、言えるのだが。
…Aがここまで焦るのは珍しいな。
己の命の危機ですら笑って乗り越える彼女が、今回ばかりはその笑顔の奥で焦っている。
それに気付いた赤井はAに付いて行くと言い出し、最終的に言い負かされた彼女がこうして先導しているのだが、いつにない運転の荒さを見て、やはり付いて来て良かったとため息を吐いた。
「ここに車は置いて行くよ」
そう言ってAが車を止めた場所は、目的の倉庫から少し離れたパーキングエリア。
倉庫の近くに止めて、万一ジンたちに見つかってしまっては堪らないので、ここに止めることにしたのだ。
「ライフルは…持ってきてるね」
「見逃してくれよ」
「分かってるよ。もう、形振り構ってられないし」
そう言ってAは胴に着けたホルスターから拳銃とサイレンサーを取り出し見せた。
「走ろう」
地面を蹴り走り出したAを追って、赤井もまた走り出した。
二人は倉庫の扉の前に身をかがめ、中の様子に聞き耳を立てた。
そしてほんの一瞬だけ目を合わせて、それぞれ中の照明に銃を向け、その引金を引いた。
二つの弾は少しずつ間を開け、確実に照明を撃ち落とした。だが、倉庫の中から降谷が逃げ出したような足音は聞こえない。
「まだ降谷さんが逃げれてない…?」
そう赤井に伝えれば、彼は倉庫の扉を蹴り開けてそのまま走り去って行く。
その行動の意味を理解したAは、すぐにその後を追って走った。
「ここまで来たら、大丈夫よね…?」
「恐らくな。もう追うのは諦めたはずだ」
「ありがとう、赤井さん。この後、東都水族館に向かうんだよね?」
「ああ、そのつもりだ」
「私たちも後で向かうよ。私は降谷さんを回収していくから」
「そうか。なら、また後で」
「ええ、また後で…」
Aと赤井はそれぞれ背を向けて歩き出した。
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作者名:i | 作成日時:2018年5月4日 18時