対照的な二人【冨岡義勇】

確認すべきは ページ9

目を閉じて考え込む冨岡に、Aはオロオロと慌て始める。
出来ればしたくない方法だったが、こうなってはどうしようもない。

「え、大丈夫？頭痛い？」

かなり的外れの心配をしている彼女に、意を決して冨岡は口を開いた。

「一緒に寝よう」
「え……」

男の一言で、女は固まった。
そりゃあそうだろう。恋仲でもない、大の大人の男女が、同じ布団で一夜を過ごすなど、常識的にありえない。しかし、背に腹は変えられない。自分が布団を使わないと言っても、こいつは聞き入れないに決まっている。
頼むから、我慢してくれ。


苦虫を噛み潰したような顔の冨岡を見て、Aは顔を曇らせる。
思いを寄せているわけでもない女と同じ布団で寝るという案を、彼の口から出させてしまった事を、酷く申し訳なく思った。これもすべて、私に気を使ったことによる答えな事も、理解していた。
そして、そこまで考え、Aはそれまで全く、微塵も思いつかなかった重要なことに気がついた。

「ねえ、そういえば義勇、結婚は？」
「……は？」

話の筋が全くないAの問いかけに、思考が停止する。
何の話か理解できず、冨岡から変な声が漏れた。

「義勇、結婚してたりする？」
「……してない」

そう答えて、やっと彼女の意図を察した。

「じゃあ誰か恋仲になってる人とか……」
「いない」
「そ、そっか……」

自分の返答に、Aは少し安堵した。
同じ布団で寝るという案から、もし自分に嫁でもいたらと考えたのだろう。
逆に今の今までそのことについて全く考えつかなかったのかとも思ったが、それはお互い様であった。

「……お前は」
「いない」

まだ“お前は”しか言っていないが、Aはこの先の言葉を察したらしく、即答が返ってきた。しかし、冨岡にはその答えが何となくわかっていた。彼女の想い人を理解していたからだ。

「……」
「……」

なんとも微妙な空気にお互い黙り込む。
男女で寝るというのは、そういうことなのだ。
Aが気を使って自分に結婚を確認したというのは、彼女が自分と寝るということをそれなりに意識している証拠だった。

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