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漏れる嗚咽に霞む視界 ページ28

彼女の涙は、彼の言葉を堰き止めた。
思わず見惚れる冨岡は、こんなに綺麗に涙を流す人間を初めて見たと思った。


ゆっくりと目蓋を閉じ、Aは考える。
長い睫毛に、雫がたまる。


……何もかも。

何もかもが、すれ違っていたことを、その時になってようやく、Aは気がつかされた。

今、冨岡の言おうとした言葉で、彼のこれまでの理解に苦しんだ言動全てが、線で繋がる。
全ては自分を想った故だった。


同じ布団で夜を共にしたことも。
あの夜、縁談話を尋ねたことも。
布団をもう一枚買っていたことも。
今日、ここへ訪れたのも。


先程、門の前で、すがる様に自分の腕を掴んだ彼の表情を思い出す。
あれを見て何故、わからなかった。
何が相弟子か。何が奴の心理は大抵読み取れる自信があるだ。

この人が、一番伝えたかった事を、私はわかってやれていなかった。

なんて、生きるのが下手くそだろう、私たちは。



溢れ続ける雫を、Aが拭うそぶりは全くなく、それは彼女の手の甲を静かに濡らした。
その拳に、もう力は入っていなかった。

とめどなく流れる涙は、最早おさまることを知らない。


堪らなく嗚咽が漏れた時だった。


一瞬にして、目の前の人物が視界から消えた。
それと同時に、何か温かいものに優しく包まれる感覚。頬に触れる柔らかい髪がくすぐったい。


気がつけば雪次は彼の腕の中にいた。
冨岡の激しい心臓の鼓動が、直接Aの鼓膜を揺らす。


この時を、どれだけ夢に見ただろう。


ゆっくりと彼女の腕が彼の背中に回される。
それに合わせたように冨岡の手が、Aの頭を、おずおずと躊躇いがちにくしゃりと撫でた。
耳を貫くうるさい心臓の音が、どちらのものなのか、最早二人にはわからなかった。

最後の言葉→←伝わる想い



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設定タグ:鬼滅の刃 , 冨岡義勇 , 錆兎
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めろん(プロフ) - 今まで読んだ全ての作品で1番良かったです。ここまで鬼滅の刃の世界観を崩さずに、作品を作れるのは本当に凄いです。作者様の鬼滅愛を感じました。良い作品を作ってくださってありがとうございます。本当に感動しました。 (2020年5月29日 0時) (レス) id: 81c5db83e3 (このIDを非表示/違反報告)
Hashida(プロフ) - 夢小説を読んでいてよく思うのは、(このキャラこんなこと言わないでしょ)というキャラ崩壊のガッカリ感で、よく萎えていたのですが、この作品は全くそんなことなくてとても面白かったです!もう1つの作品も大好きです!頑張ってください! (2020年2月6日 12時) (レス) id: 3c3060ecea (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - かなえさん» 返信が遅れてしまってすみません。長文コメントありがとうございます笑 沢山の文字でとても嬉しいお言葉に感謝です笑  楽しんでいただけて良かったです^ ^ (2020年1月31日 14時) (レス) id: 195d1979fa (このIDを非表示/違反報告)
かなえ(プロフ) - ああああ、、、、、、!!たまに居る占ツクの文才作者や、、、。ついに鬼滅で見つけた、、、。しかも支部によくいる文章も書けて絵も描ける系のひとや、、、。あなたみたいな人を見つけることが本気稀にあるから占ツクも捨てたもんじゃないなって思います。長文失礼。 (2020年1月18日 20時) (レス) id: 507f83f0de (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - 葉月さん» わかります笑 時々すごく面白い作品を見つけた時すごくテンションあがりますよね笑 葉月さんにとってそれがこの話であってくれたなら幸いです^ ^ コメントありがとうございました! (2020年1月16日 21時) (レス) id: d2a45a75c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わか x他1人 | 作成日時:2020年1月3日 9時

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