違う回答 ページ15
目覚めると、隣の布団に奴はもういなかった。重い体を無理やり起こし、隣の部屋の戸を開くと、寝巻きから着替え終えた冨岡がそこには居た。
昨日のこともあり、もしかして、置いていかれたのでは?と、そんな気持ちが湧き出ていたAは静かに安堵する。
「おはよ、義勇。今日は早いね」
「……」
Aの嫌味を、冨岡は無視した。
「Aも早く着替えて来い」
台所から顔を出した鱗滝さんがそう言った。どうやら朝食の用意をしてくれているようだった。
私も急いで着替え、食卓につく。
以前、善逸君が誰かと共に食事をしたほうが美味しいと言っていたのを思い出し、その通りだと感じた。
「お世話になりました」
「また、来ます」
挨拶をして、出て行く私たちを鱗滝さんは家の外に出て見送ってくださった。
しばらく振り返りながら、大きく手を振っていた私だったが、ちょうど恩師が見えなくなったあたりで転けそうになり、義勇に支えられた。そして後ろ歩きは危ないからやめろと制される。
「ごめんごめん」
彼の腕を掴みながら、体の重心を整える。私を容易く支えるほど、義勇の腕は相変わらずたくましかった。
昨夜の会話がまるで無かったかのように、彼の態度はいつも通りであった。
それが嬉しいような虚しいような。
結局この人が、私の想いを悟っているのかどうかはわからなかった。
昨夜、「叶う相手なのか」と問われ、否定した時、どうしてだかこの人も一瞬だけ、悲しそうな顔をしたのを覚えている。
その表情の意図を、私がわかるわけがない。
「ねえ、義勇」
歩きながら彼を呼び止める。
「どうした」
「昨日の話なんだけど」
「……」
その言葉に、冨岡は立ち止まり、Aを見据えた。
どこか構えるような雰囲気がしたのは何故だろうか。
「義勇には縁談の話とかきてないの?」
「きていない」
「……」
冨岡の素早い返答に、Aは然程驚かなかった。その答えを予想していたようであった。
「じゃあ誰か、一緒になりたいと思う人は……」
「いない」
Aはもう、それ以上聞くのをやめた。
冨岡の返答は恐らくどちらも嘘であるだろうと、考えていたが指摘はしなかった。
「本当は?」と、聞いてしまうのは簡単なようで唇が重く動かない。
わかり切っているその答えを、わざわざ傷つくために聞きたく無かった。
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めろん(プロフ) - 今まで読んだ全ての作品で1番良かったです。ここまで鬼滅の刃の世界観を崩さずに、作品を作れるのは本当に凄いです。作者様の鬼滅愛を感じました。良い作品を作ってくださってありがとうございます。本当に感動しました。 (2020年5月29日 0時) (レス) id: 81c5db83e3 (このIDを非表示/違反報告)
Hashida(プロフ) - 夢小説を読んでいてよく思うのは、(このキャラこんなこと言わないでしょ)というキャラ崩壊のガッカリ感で、よく萎えていたのですが、この作品は全くそんなことなくてとても面白かったです!もう1つの作品も大好きです!頑張ってください! (2020年2月6日 12時) (レス) id: 3c3060ecea (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - かなえさん» 返信が遅れてしまってすみません。長文コメントありがとうございます笑 沢山の文字でとても嬉しいお言葉に感謝です笑 楽しんでいただけて良かったです^ ^ (2020年1月31日 14時) (レス) id: 195d1979fa (このIDを非表示/違反報告)
かなえ(プロフ) - ああああ、、、、、、!!たまに居る占ツクの文才作者や、、、。ついに鬼滅で見つけた、、、。しかも支部によくいる文章も書けて絵も描ける系のひとや、、、。あなたみたいな人を見つけることが本気稀にあるから占ツクも捨てたもんじゃないなって思います。長文失礼。 (2020年1月18日 20時) (レス) id: 507f83f0de (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - 葉月さん» わかります笑 時々すごく面白い作品を見つけた時すごくテンションあがりますよね笑 葉月さんにとってそれがこの話であってくれたなら幸いです^ ^ コメントありがとうございました! (2020年1月16日 21時) (レス) id: d2a45a75c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わか x他1人 | 作成日時:2020年1月3日 9時