いつかの話。【約束のネバーランド】 【短編・中編集】

香る人3 （ノーマン） ページ9

一斉に視線が僕へと集中する。

「え」

Aも驚いてこっちを見ていた。

……エマ、君ってやつは本当に。

心の中でため息をついた。
変なところで鋭くて、必要なところで鈍いんだから。
当のエマは自分の言ったこと衝撃具合に気がついていないのか、キョトンとした目で僕を見つめる。

そして……

「ほお〜」

となりにいるレイはここぞとばかり口角を上げた。

「なんだ、ノーマン、そうだったのか」


ニヤニヤ笑いながらそう言ってくる。

……覚えてろよ。

そう言いたいのをひとまず抑える。
こんなことでいちいち動揺しているような僕じゃない。

「…なんのこと？エマ。」

笑ってそう答えた。

「え、だっていつも…」

「気のせいだよ」


笑顔の奥に、有無を言わせない圧をかける。
それに誰よりも早く気がつくレイは、あからさまに面白くないと言いたげな顔をした。
Aも「そうだよね」と苦笑している。

「なんだー」

「やっぱエマの気のせいだよ」

そう笑ったところで、この話は終わった。
するとその時、不意にレイが口を開いた。


「そうだ、エマ。さっきドンが呼んでたぞ」

「え、うそ」

「本当。連れて来いって言われてたの忘れてた」

「もー、レイ、早く言ってよ」

「悪い悪い」

……。


「じゃ、そゆことで」

ニヤリと笑ってレイはエマを連れて行った。

あっという間の出来事。
ただ黙って2人を見送る僕とA。

……なんの茶番だよ。

はあ、と 今度は本当にため息をついた。

「ドン、なんだろうね？向こうが来ればいいのに」

そう首を傾げてAが僕の横に腰を下ろした。
つられて僕も座る。

「さあ、きっと大したことないよ」

そう言って苦笑いすれば、ふと、Aと目があった。

少しだけ、落ち着かない様子なのは気のせいだろうか。


すると、恐る恐る、Aが口を開いた。

「さっきの


ちょっと、びっくりした」

照れ笑いしながら、Aはそう呟く。
思わず、数秒固まってしまった。

僕関連で照れてるAを、初めて見た気がした。


「僕も」

そう言ってニコリと笑ってみせる

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