重なる視線5（レイ） ページ49
これは私の、せめてもの反抗だった。
「は、お前、今……」
珍しく動揺しているレイに、私は思わず笑う。
そしてパッと手を離し、戸惑うそいつを置いて扉まで歩き始めた。
「ちょ、おい」
そんな私の腕を焦って捕まえるレイ。
私は精一杯澄まして振り返る。
「なに？」
「何って、今」
自分から言うのが嫌なのか、レイは言葉を
そんな様子に、私は笑いを堪えて言ってやった。
「あ、ごめん、ちょっと
「は？」
「大丈夫だった？」
そう言ってそっとレイの頬を軽く撫でる。
するとレイはバッと勢いよく顔を逸らし、数秒固まった。
前髪に隠れて表情は見えないが、明らかに焦っているのがわかる。
少し笑いが溢れてしまったが仕方ない。
「お前……」
「なにか？」
恨めしそうにこちらを睨みつけるレイに微笑んで見せる私。完全にさっきと立場が逆だった。
その状況に、レイは静かにため息をつき、無理矢理口角を上げ、ゆっくりと口を開いた。
「いつも俺のこと見てるんだっけ？」
「うん、レイの前髪って鬱陶しくてつい見ちゃうんだよね」
「あ？」
形勢逆転を装って言ったであろうレイの台詞も、今は逆におかしくて仕方なかった。
そんな私を気に食わないようにレイは睨みつけてくる。しかしそれも逆効果だ。
明らかに楽しんでしまっている私に、もはやどうしようもないと、レイはわかりやすく落胆した。
「レイ、どうしたの？さっきから顔が赤いけど」
調子に乗った私は、そう言って下から顔を覗き込む。
すると、真っ直ぐこちらを見据えるレイと目が合った。
覗き込むことによって、普段は隠れてしまっている左目とも視線が重なる。
そして思わずドキッとする私。
少し調子に乗った事を後悔しながら、必死にそれをひた隠す。
「A、マジで覚えてろよ」
「何をでしょうか」
そう言ってレイは私の顔を鷲掴みにした。
バレてなかった事に安心して、私は惚ける。
「腹立つ顔しやがって」
そう言ってレイは歩き始めた。
「し、失礼な！」
私も後に続く。
変えられるか分からないこの関係性。
それでもいいと、私は思った。
このままでもいい。
せめて、いつか訪れる別れの日まで、私は彼の隣で、他愛のない事で、一緒に笑って居たい。
そう願いながら、私は静かに図書室の扉を閉めた。
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わか(プロフ) - 扇子さん» 好きだと思っていただける作品があってよかったです^ ^コメントありがとうございました。 (2019年2月22日 23時) (
レス) id: 0e40a74b11 (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - レイ(現在アカ開けない)さん» こんにちは。コメントありがとうございます。2人とも最高の癒しですよね本当に笑 こちらこそありがとうございます！ (2019年2月22日 23時) (レス) id: 0e40a74b11 (このIDを非表示/違反報告)
扇子(プロフ) - はじめまして。短編すごくキュンキュンしました。特にノーマンの発熱が惑わすが最高でした。好きです。とても良いものを見せてもらいました。ありがとうございます。後編の方も楽しみに待ってます。 (2019年2月10日 1時) (レス) id: a5b4ebbb14 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(現在アカ開けない) - こんにちは、レイと同じ名前のレイといいます(笑)。小説面白かったです。ノーマンの笑顔ってもうかわいいことこの上ないですよね。レイでも癒やされノーマンでも癒やされました。有り難う御座いました。 (2019年2月8日 22時) (レス) id: bdf972c5dd (このIDを非表示/違反報告)
わか(プロフ) - テントウムシさん» コメントありがとうございます！ノーマンかっこいいですよね〜！癒しなんて言っていただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年1月19日 18時) (レス) id: 0a9329453a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わか | 作成日時：2018年1月20日 21時
