132話 ページ1
こっちに向かって走ってくる大河の顔がふ、と歪められて。
どうしたのか、と疑問符を頭に浮かべてから、要因は私だと悟った。
私の視界は水の膜を張っていたし、頬には涙が伝っている。
それに、そこに心臓があるかのように疼く首筋には、異質な液体の感覚があるから、きっと血が出てる。
そんな私の姿を見たからだろう。
昔から大河は、そうだ。
私が転んでケガした時や、泣いた時には、必ず顔を歪めてから『大丈夫だ』って言ってくれてた。
すぐに絆創膏を貼ってくれたり、涙を拭ってくれたりして、笑顔を向けてくれてた恭介とは本当に対称的だったけど。
心配という感情から歪められた顔と、『大丈夫だ』の言葉は確かに私を支えていた。
大河が大丈夫だ、って言ったら大丈夫だ、と。そう思えたのだ。
大「―――…っざけんなよ!」
大河の怒声にピクリ、男は肩を震わせて、次の瞬間。
大「A、伏せろ」
すぐ近くで聞こえたその声に、かたく目を瞑り。
男の体温が少し離れた瞬間に、急いで腰を屈めて、その場に伏せた。
男「……うっ」
直後、後方から、呻き声と共にドン、と地面に何かが倒れた音がした。
何事かと、かたく閉じた瞼を恐る恐る開き、振り返ると。
気絶しているのか動きを見せない男が、地面に倒れていた。
何故、と男からその傍に立つ大河へと目をやる。
大「大丈夫か?」
膝に手を当てて荒い呼吸を整え、邪魔だと言わんばかりに前髪を掻き上げた大河の言葉。
「わかんない……」
本当に自分でも分からなかった。
とてつもない事が起きた、という事以外は、まだ頭が情報を整理仕切れず大丈夫なのかも分からない。
「その人、は……?」
何故、男は気絶しているのか問うと、大河は私から男へと視線を移してから。
大「俺が蹴ったからじゃねぇの」
「……蹴ったの?」
大「あぁ」
あまりに平然と、淡々と、言うものだから驚きもしたけど。
そういえば大河と恭介は、中学の時にサッカー部だったんだと思い出し、納得した。
サッカー部で鍛えたであろうキック力を持ってすれば、一撃で気絶させる事も可能な気がする。
零「大河ー、大丈夫か?」
後方からの柔らかさを携えた声音に振り返ると、軽い足取りで石段を上ってくる零夜先輩がいた。
「零夜先輩、なんで……?」
零「さっき大河と会って、一緒にストーカー探ししてた」
柔らかな双眸で微笑するその姿。
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れいか(プロフ) - 一日でこんなにたくさん書けて凄いです!更新頑張ってください! (2013年7月18日 21時) (レス) id: 6987978d75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りょーくん | 作成日時:2013年7月17日 19時