優しさは、時に棘になる (ページ16)

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阿部さんの手が頬に触れる

〈ごめんね？泣かせちゃったみたい〉

親指で涙を拭いてくれる阿部さん

〈俺、もっとAさんのこと知りたい〉

私はパッと顔を上げる

「阿部さんってやっぱり優しすぎて良い人すぎます、」

〈良い人じゃないよ、全然〉

阿部さんがコーヒーを一口啜った

その表情は何を思ってるの？

「だからなんで、」

〈言ったでしょ？俺、良い人じゃないから〉

『阿部さん、A今日からよろしくお願いします！』

当たり前のようにエプロンを付けて目の前に立つ男

「絶対嫌ですから」

〈まあそんなこと言わずにね！向井くんは関西弁が特徴的でなんかコミュニケーションも上手そうだから接客お願いしたいな！〉

『もちろんです！阿部ちゃんよろしくな！』

“阿部ちゃんか～じゃあ俺は康二って呼ぼうかな“なんて言ってるけどいつの間に仲良くなったの？

『Aちゃんもよろしくな？』

出会った頃もそんな呼び方だったななんて昔のことを思い出した

いや、私は彼のこと忘れるんだから、絶対もう好きになるわけないんだから

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