【npl】愛色図書館【短編集】

＊ ページ43

「……はっちさん、薬飲みたい」
「…………一応聞くけど、どれ？」
「向精神薬」
わたしは、月一で通ってている病院の先生から「薬を飲む時は、ご家族が見ているところでね」と小学生に言うようなことを言われている。何度かオーバードーズを繰り返した結果だとは理解していても、わたしのことだから放っておけ、という気持ちもある。でもお医者さんに怒られるのは嫌なので、わたしの服薬管理ははっちさんに行ってもらっている。
「一錠ね」
「うん」
はっちさんは席を立ち、わたしの薬を取りに行った。食事中に言うことではなかった、と後悔をする。後悔するのが遅すぎる、とわたしがわたしを責める。でも今飲まないとわたしはきっと自分の首を絞めてしまうだろうと漠然と考える。
「はい」
とはっちさんが持ってきたのは、5mmにも満たない小さな一粒の薬だった。
これがどう作用してわたしの頭、もしくは心に効いているのか、わたしにはさっぱりわからない。でもこれを飲むとわたしは少しだけ元気になってよく眠れるようになる。それが本当にいいことなのかはわからない、と一度だけはっちさんは言っていた。わたしだってわからないことだった。
わたしは「ありがとうございます」と吐きそうになりながら言って、机の上に置いてある透明のコップに入った水と一緒に飲み込んだ。水は、どうにか飲める。生き物感がないからじゃないかとわたしは予想している。
「……はっちさん、ごめんなさい。ご飯、もう食べれない」
「わかった。お腹空いたら、いつでも食べていいから」
わたしはそう告げて、リビングのソファに倒れるようにうつ伏せになった。はっちさんはそのまま食事を続けるようだ。豚肉の匂いが寝転がっても漂ってきて、吐きそうになる。でもカーペットとかソファとかを掃除する手間暇を考えて、なんとか抑え込む。死にたい、吐きそう、死にたい、吐きたい、死にたい、吐きたい、死にたい、吐きたい。壊れたラジオみたいに同じ言葉が頭の中で繰り返される。

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