第232話 ページ37
病院の病室・205室
「ちっ、何で生き残ってんだ。そして、何で見舞いにてめぇも来てんだ？んん！？」
ジャリジャリ....。
「.....─────！」
てってれ〜ん！
『おお！』
「ドヤ顔うぜぇ.....」
士門と共に天馬のお見舞いに来た私。病室には誰もいず、お見舞いの品として買ってきたフルーツのうちの一つ、りんごを士門が切り始めた。
それを隣で「お、上手いなぁ」と思いながら見ている。りんごの皮を途切れることのなく、繋げて切れたことにドヤ顔の士門は可愛かった。「彼方の教えが上手いからな」「そんなことないよ」と士門が褒めてくれる。
「兎に角、今は回復に専念しろ。死んで俺との勝負から逃げたかったようだが.....残念だったな」
「あ゛あ！？」
『(それまだ続いてたんだ.....)』
「オイ、言動に気をつけろ。なんで俺がてめぇとの勝負から逃げなきゃなんねーーんだ！？」
「ん？違うのか？現世で俺に勝てないから、いっそ死んで決着つけられない様にしたかったんだろ？」
「てめぇ.......！？」
煽ってる.....。
天然煽り士門だ.....。
「まだ、自分の立場がわかってねーのか！？」
「うん、その意気だな」
「！」
「傘下の方達も皆お前の帰りを待っている」
私達の会話を扉の外からずっと聞いているのは気づいていた。天馬の事を慕っていて、大切に思ってくれてる人がいっぱいいる。昔よりもとってもよくなってる。
チラリと扉の方を見てから、二人に視線を戻した。
「結果としてお前は死の運命から生き残った」
『！』
「つまりまだお前には、やるべき事が残されているということだ」
やっぱり、天馬は今回の戦いで死ぬ運命だとずっと前から.....私と出会った頃から知っていたそうだ。
「運命とやらが「生きろ」─────と言っていると言うことだな」
「......ちっ、うるせぇよ。────！そう言えば、チビ助はどうなった！？」
『......！.....ろくはまだ眠ったままだよ』
「何ぃ？」
「勘久郎さんが言うには死んでいたとしても何の不思議もないと。二度も限界を越えて戦ったんだ。無理もない......」
今も目覚めないろくろ。紅も様子を見に行ってるし、繭達だってお見舞いに行っている。目覚めないろくろを信じて待つしか方法はないと思っている。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2021年10月1日 18時
