◇記憶の中の大切な思い出 ページ9
「構築積みデッキって?」
エミちゃんがカードを見ながら、構築積みデッキについて質問した。
「誰でもすぐにカードファイトができるデッキです!」
「でも、デッキって時間をかけて作るものでしょ?」
パックを買って、たくさんのカードから選んで、いっぱい考えて自身のデッキを作りあげる。私もやったなぁ。
「構築積みデッキだって時間をかけて作られてますよ。初めての人でも楽しめるように一枚一枚愛を込めてねぇ.....!」
「愛.....ですか.....?」
「!」
シンさんはきっとこのファイトでミサキに思い出してほしいことがあるんだろうね。
辛い記憶の中にある大切な記憶......。
大切な記憶の中にある愛を.....。
───────────
──カサネ、強くなったな!──
でも、お父さんには勝ててないよ.....!!
──まだまだ、娘には負けられないからな!──
悔しい!!お父さん!もう一回ファイトして!!
──いいぞ!次も負けないからな!──
──カサネ!おじさんなんて倒しちゃえ!!──
うん!ミサキの応援で次こそ勝てる気がするよ!!
──────────
『(.......お父さん.....か.....)』
私の記憶の中のお父さんは、
いつも大きくて、
キラキラしていて、
色褪せない思い出の中にいる。
「.....うっ......ぅぅ......」
ポタ.....ポタ.....。
「......ミサキ.....さん?」
ファイトの途中、ミサキの瞳から涙が流れた。
「ミサキ......」
『......ミサキ....』
ああ、きっと思い出せたんだね.....。
大切な思い出.....。
「シンさん......。......私......あの宝箱......鍵がないの......」
『!』
ああ、覚えてた。
記憶の奥底に閉じ込めていた大切な記憶をちゃんと。
「お父さんが組んでくれたデッキ......宝箱、開かないから......どうしよう鍵.....!シンさん.....!」
「!.....やっと、思い出してくれたんですね......。カサネちゃん....」
『.....うん.....』
シンさんに呼ばれ、私は頷く。
制服のポケットに手を入れて、手のひらサイズの巾着を取り出した。
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2021年11月6日 19時