◇気づいていない事 ページ40
春高の代表決定戦に勝ち、一月に開催される春の高校バレーに神奈川県代表として私達は出場する事になった。
あの舞台に今年立てるなんてとても嬉しい。
春高進出も嬉しいが、私達には更に上の目標がある。
春高優勝!!という目標が。
『........んー』
「(唸ってる.....)湖羽〜、数学の教科書貸して」
『うん、いいよー』
次の授業前の休み時間。
隣のクラスの菊乃が珍しく教科書を忘れた。今日は桜良は休みなので私に借りに来たのだろう。机にしまってあった数学の教科書を出して、彼女に渡した。
受け取った菊乃は「ありがとう」と言って、教室を出て行く......と思ったが、そうではなくて椅子に座る私を見ている。
『?どーしたの....?』
「さっきからその調子?」
『その調子って、どんな調子?』
「(え、無意識なの.....?)何か考え事してるって表情してる」
『え』
そんな表情して......、たかも.....。
してないとは言えなくて、朝からずっと考えてる。窓側の席から頬杖ついて空を見上げて、先生の話も右から左に流して、黒板の板書だけをノートに写す。それだけはスルスルと進んでいくのに頭の中は考え事でいっぱいだ。
今日のお天気みたいにスッキリしない。雨の予報だったよなぁ。
「湖羽が悩んでる事は分かるよ」
『!』
え?知ってるって何で.....?
でも、その私が悩んでる事を明確には言わない菊乃。
「案外、簡単なことだと思う。湖羽にとってはそうじゃないかも知れないけどね?」
『......簡単な.....事.....』
「気づいたら多分ね、納得すると思うの」
「湖羽はその答えをもう知ってるよ」と言って、菊乃は私のクラスを出て、自身のクラスに戻って行った。私はその後ろ姿を見てて、すぐに次の授業のチャイムが鳴った。机から次の世界史の教科書、ノートを出して先生が来るのを待つ。
『ボソッ).........気づいたら......かぁ』
それって、私の感情の中に答えがあるって事か。
もう私の中にはそれがあって、後は私が気づくだけで.....、案外簡単な事に私は気づいてないの.......か、な.....?
真波への告白の答えをこんなにも悩んでいる訳。
何か私の中にわからない感情があるのは分かる。
『(その答えは.....簡単な事......)』
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2022年11月28日 21時