◇無自覚のスキ ページ34
榊千歳side
『.......』
「(やっぱり、悩んでる)」
私の親友、美園湖羽に好きな人ができた。気づいたのはいつだったか.....。本人は全くの無自覚のままここまで過ごし、先日の自転車競技部の三年生追い出しファンライドの後に告白されたんだと思う。本人から聞いた訳ではない。
その次の日に「真波君、調子戻って来てるよね」『.......あ、うん』とどこか返答が可笑しくて、真波という言葉に分かりやすくビクッとしていたのだ。
東堂君と二人、あ、これは何かあったなと。
「ねえ、湖羽」
『どうかした?』
春高代表決定戦前の最後の部活練習。
部室には三年生だけで、一年生と二年生は帰っている。部活の時は大丈夫なのだが、学校ではどこか様子が可笑しい湖羽。バレーやってる時は告白の事は頭から抜けてるらしく試合でも大丈夫だと思った私(元々大丈夫だと知ってたけど一応)は、彼女に聞こうと口を開いた。
「真波」
『!!』
「君に告白でもされた.....?」
『!?!?な、何でッッ.....!!』
予想通り.....だった。
湖羽に真波君が告白したのだ。
制服に着替えながら湖羽は顔を真っ赤にさせていて、多分告白の時の事を思い出しているんだろう。今まで、湖羽が告白されても本人がこんな反応を見せる事はなかった。超分かりやすい。
湖羽の好きなの人は、一年生の真波山岳君だ。
好きになったのは多分、あの日。
真波君をゴールラインの手前で応援した時がきっかけ。本当はもっと前からで真波君といることが楽しくて、彼の存在が大きくなってきていたんだと思う。早い段階で小野田君のお母さんと霜波さんも気づいていた。
夏に木兎が、私達が湖羽が変化したと思ったのはちょっとの恋心。変化した原因が真波君で恋が原因だということは気づかなかった。
バレーバカの湖羽の中に真波山岳っていう存在が入ったんだって、入り込んだんだって、思った。嬉しかった。湖羽に幸せで、たまに苦しくなって、寂しくなって、安心して、楽しくて嬉しくなる、不思議な感情。恋を知ってくれて.....。
「(こんなにも悩んで、思い出す度に照れることなんてなかったのに.....)」
それが真波君への気持ちで答えなのに。
湖羽は無自覚だけど、気づいて理解すればあとは簡単。
自覚するまでが長い。
「(早く自覚して、気づきなよ)」
68人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏菜沙 | 作成日時:2022年11月28日 21時