◇牽制中 ページ25
この時期、湖羽は相手チーム対策のために夜遅くまで公式戦のDVDを観ている。最近眠そうに過ごしていて「寝ないよー」と言っていた湖羽。注意して見ていたはずだったのだがな......。
「湖羽さんのバカ！！風邪引いたら元もこもないのに！」
「.........真波」
「はい？」
「お前、荷物も置いて来たって言ってたよな？」
「そうですけど」
他の二年生と話していた奥山が来て、真波に質問をした。「風邪引いたら湖羽さん、春高予選行けないのに〜！！どうしよう！！？」と彩芽がオロオロとしている。
「制服、ジャージ......荷物を全部湖羽さんの寝るベンチに置いてきたのか？」
「はい」
「風邪引くと思ってブレザーとジャージの上着かけてきたか？」
「それなら風邪引かないかなって思って」
「(予想通り......)彩芽さん、とりあえず湖羽さん風邪引く確率は低いと思いますよ」
「え？」
奥山の説明を聞いた彩芽は落ち着いたようで少しホッとしたようだ。この時期はあの二人への注意力が必要になるからな。
「.......やるね、真波君。彼氏みたい」
「!?」
彼氏みたいと言う彩芽の言葉に真波は分かりやすく反応を見せた。確かに自分のブレザーをかけるなんて分かりやすい牽制だな。本人にその異図がなくても、他からみたら男子の制服の上着がかかっているのだ。今頃、湖羽を見つけた生徒の中でそう思う生徒はいるだろう。.......本人は絶対にわからないが(確信)。
「......ん、待て。湖羽に制服とジャージを貸してあると言うことは、真波お前着替えられないではないか！」
「そうですね〜。貸しちゃってますし」
それを聞いて奥山が携帯を取り出して、電話をかけ始めた。
プルプルプルと電話のコール音。数回しても相手が電話に出ない。耳から携帯を放した奥山が画面を見て、「あ」とこぼした。
「.........真波の携帯に電話かけてました」
「「「「「(すると思った(思いました).....)」」」」」
「(すぐに携帯で電話かけ始めた辺りから怪しかったからな.....)」
「(ここまで抜けてる所が来なかったから、そろそろかと思ったぜ)」
お約束のようにちょっと抜けてる所がある奥山。
真波の電話にかけてもアイツは人のだって戸惑って、電話には出ないだろう。ポケットから携帯を取り出して、電話をかけた。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2022年11月28日 21時
