◇落ち着いて ページ11
『(はぁ.....)』
「......」
休んでるって言うのにすぐにでも走りだしそうで、表情からして無理してるように見える。めちゃくちゃ見えるし、インターバルなのか?みたいな雰囲気だし。
座ろうとしないので「ほいほい!座れー」と背中を押して、無理やり座らせて休憩させた。
「.....俺、そろそろ行きますね」
『!』
「.....先輩に休憩させてもらいましたし」
ボトルを手に立ち上がろうとする真波の前にすかさず立って、立てないように立ち塞がる。
『今の状態で走るの?』
「.....俺、強くならないと、なの.....で.....」
『自分の走りもできてないのに?......そんなの強くなれないよ』
「.....っ.....!」
今の君じゃ強くなんてなれないんだよ。
その前に絶対怪我して、自転車にしばらく乗れなくなる。
『倒れるのは、休んでないからでしょ?ちゃんと休憩取らないと』
「........っ、練習しないとなので」
『......疲れてるんでしょ?』
さっきから図星しか言ってないと思う。
ここで奥山の話が役に立ったとかはちょっとはあるけど、大体見ればわかる。真波の視線はさっきから私ではなくて地面の草の方に向けられている。
声音は暗く、表情も暗いのはなんとなくわかるもんで.....。
「先輩退いてください.....」
『それは出来ない相談だよ。また倒れられるのは困るもの』
「でもッッ!!俺、勝たないと....なん、です.....。これからのレース全部全部ッッ!!勝ってッッ!!......俺は、俺はッ!!」
『うん』
ゆっくりと右手を伸ばして、
「勝たないとッッ.....!!次はッ!全部、全部....!俺がッッ.....!」
『うん』
しゃがむ途中で両膝を地面につけて、
「もう負けちゃいけないんだッッ!!!だからッッ!!!!」
『うん、わかったから──────』
ぎゅっ。
片腕を背中に回して、もう片方の手を真波の頭の後ろに回して引き寄せて、腕の中に閉じ込めた。
『______落ち着け』
「!!」
ぎゅっと抱き締めて、トントンと背中を叩く。
落ち着けって伝わるように。焦らなくていいからって伝わるように。ゆっくり息を吐いて、呼吸を整えてほしくて。
『ゆっくりでいいよ。落ち着いて』
「先、輩.....」
『君が言いたい事はわかったから.....、急がなくていい』
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2022年11月28日 21時