◇記憶に残る綺麗な氷 ページ3
noside
それは出会いの話。
特殊な魂をもつ者と銀髪の髪をもつ少年の、
過去の色褪せない記憶の話。
──────────
『.....綺麗な髪だね』
「....っ....！」
突然聞こえて来た声に、少年は驚き視線を声のした方へと向けた。声の主と少年は目を合わせ、声の主である彼女は、「こんにちは」と綺麗に微笑んだ。
少年は突然現れた彼女に驚き、そして言葉にも衝撃を受け、目を見開いて固まってしまった。
視線の先には、見惚れてしまうほど美しい黒髪の女がいた。
少年は、彼女の姿に他の者達と同じように目を逸らせずにいた。
「光ってる.....太陽みてぇ」
『ん？......ああ、私の瞳(め)のこと？』
コクりと頷く少年に、彼女は優しく微笑んだ。
指で瞳の下を優しく撫でる。
「珍しい色だな。......綺麗だと、思う.....」
『ありがとう』
「嬉しい」と頬を綻ばせる彼女に、少年は照れ臭くなりそっぽを向いた。
『それを言うなら、貴方も綺麗な髪色に、碧緑色だよ』
「.......お前の珍しいとは違う」
『そう？貴方には、貴方の良さがあると思うけど？』
彼女は、目を細めて本当に綺麗なものを見たかのように微笑む。その表情に嘘なんてないと、それを少年は感じ彼女に向けて言葉を放った。
「.......お前、変わってんな」
『う〜ん、変わってるかなぁ？素直な感想だよ』
「変わってるかなぁ？」と少年に言われた言葉を表情には出さず、一人考え始めた彼女。彼女自身、どんな髪色を持っていようと特別気にする事はない。
「氷みてぇって、他の奴らは俺を見て関わろうとしねぇのに」
『その人達は見る目ないね。貴方の髪はすごく綺麗なのに』
「！」
視線を合わせ、彼女は笑いかけた。
その人達の声は気にしなくていいのだと。
君の髪色は、とても綺麗だからと多くは言わないけれど、どれも彼女の視線がそう語っていた。
本人からしたら、ただ事実を言っているだけと思っている。
彼女の言葉は、どれも嘘偽りのないもの。
それを目の前の少年は、最初に会った時から思っていた。
『貴方の目も髪もすごく綺麗で、私は好き』
「......っ...！」
風に揺れ、さらさらと動く彼女の黒髪は艶やかで、金色と橙を混ぜたような色の瞳は、太陽のように眩しく明るかった。
『綺麗な氷の色』
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2023年9月17日 21時
