◇監督生と出会い ページ13
noside
「あ、すみません！」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません」
明治十一年、東京。
剣術道場、神谷活心流の師範代を務める神谷薫は、逆刃刀を持った流浪人、緋村剣心と出会い家主と居候という立場で共に暮らしていた。父の残した神谷活心流の門下生、明神弥彦と喧嘩屋である相楽佐之助らも加え、薫の周りは昔よりも賑やかとなっていた。
そんなある日、家へと帰る途中に薫は着物に着た綺麗な女性とぶつかってしまった。物腰の柔らかそうな女性にすぐに謝れば、女性は気にした様子もなく首を横に振る。
だが、薫がその女性を見た時彼女の顔は真っ青で、具合が悪そうな表情をしていた。ふらりっと重心がずれ、女性が倒れそうになるのを「大丈夫ですか！？」と薫は慌てて支えた。
「え、ええ.....」
「(大丈夫じゃなさそう......)あの、私の家この近くなんです。具合が悪いのなら、少しうちで休んで行きませんか？」
「いえ、ご迷惑をおかけするのは.....」
「そんなことないですよ！困った時はお互い様ですし.....！」
目に見えて、具合が悪そうな人をここには置いて行けないと薫は思う。このままでは、倒れてしまうだろうと。なら、倒れてしまう前に休んだ方がいいと。「多佳子！！」「あ、隆介さん.....」と女性の後ろの方から、声をあげて駆けてくる一人の男がいた。二人は知り合いのようで、お互いの名前を口に出していた。
「大丈夫か？」
「ええ、平気ですよ」
「.........いや、平気だったら、この女性が心配そうにお前を見ていないだろ？俺が見ても具合が悪そうに見える」
「えーっと.....」
気まずそうに視線をずらす女性と呆れ顔の男性。駆けよって着た男性に嬉しそうな表情をしたのを見た薫は距離も近く、名前で呼び合っている関係をただの友人のようには見えなかった。
「あの......」
「！す、すみません。妻のこと、支えてくださりありがとうございました」
「いえ、気にしないでください！」
「それより、今話していたんですが.......」と薫は、女性にも話した提案を今度は男性にした。すると男性も申し訳なさそうな表情をして、首を振る。けれど、女性の表情は変わらず具合が悪そうに見え、薫はここで引き下がらず粘り、二人を自身の家へと招くことに成功した。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2023年10月5日 15時
