第14話 隠なドジっ子�� ページ50
『前世......』
「あ、いやっ......」
口元を隠している状態でもわかるほど、彼女の顔色は真っ青になっている。私も恐る恐る久しく使っていない″前世″という単語。
それを使うのは、私と同じような体験をした人だけ。
この世界に転生した人だけ。
転生したこの世界で、前の自分の記憶を持って生まれた人だけ。
『(もしかして.....)』
もしかしたら.....。
私が思っている事が合っているのだとしたら.....。
この人は.......、
「そ、そのっ.....今のは、本で読んだことで.....っ....！私たまにそうやって、口に出しちゃうことがあってっ.....！？」
『君も.....転生者....？』
「.......え.....」
身振り手振りで、さっきの言葉を誤魔化そうとする目の前の彼女が、私の言葉で止まった。目をこれでもかってほどに見開いて、私を見ている。パクパクと口を動かして、言いたい事を言おうとしては、声は出ない。
「あ.....ああっ.....あなた、あな、あなた.....も？」
『うん』
言われた言葉に戸惑って、でも状況を呑み込もうとしているのがわかる。コクりと頷けば、隠の彼女はじわじわと目尻に涙を貯めていった。
「ほん、とう.....？」
『うん』
「ホントにホント？」
『うん』
「ジャ○プもマ○ジンもサン○ーも知ってる？」
『知ってる知ってる』
車とか、ビルとか、カラーテレビとか、冷蔵庫とか、もっと(この時代からしたら)近代的なものを言って来るかと思ったら、少年雑誌の名前だった。
しかも、どれも週間発売の。
この人、もしかして少年漫画見てた？
「年号は.....？」
『令和になったよ』
「ｳﾞｯ.....一緒だぁぁぁ〜！！」
『！』
年号を確認してから、その隠の人は地面に座り込み、泣き出してしまった。
え、え、え、泣いちゃった....。
私、泣かせちゃった......(オロオロ)。
『な、泣かないで.....』
「ﾋｯｸ......ごめんなざぁぁぁい〜！！！！」
駆け寄れば、抱きつかれ更に泣かれた。
これもう、何を言っても泣かれるパターンですか？？
そんなにも泣かれるような事、私言った覚えがないのだけど......？
『隠さん、場所移そう』
他の隠の人が来たら、いろいろ大変そうだもの。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2023年4月15日 14時
