第9話 藤ノ花と最終選別�� ページ31
『(師匠がっ！？)い、いえいえいえ！師匠にはこんなに綺麗な羽織を手直ししてもらいましたし！』このお借りした刀だって......』
「手直しぐらい朝飯前よ！」
ご飯が美味しくない師匠に作ってもらうと、最終選別で生き残る前にノックアウトされてしまう。それだけは、何とかして防がなくてはっ......！！
『それにこのお借りする刀だって......』
「気にしなくていいわよ」
師匠のおじいさんも呼吸を使えなかったそうだ。
でも、「灯りの舞」を伝承し、後世に伝える傍ら、おじいさんの手元には、一刀だけ鬼を斬る刀があったそうなのだ。使うことはなかったその刀は、今私の手元にある。
「使って。きっと、この刀が咲々芽ちゃんを守ってくれるから」
『！』
私は、刀を持っていないので、最終選別で師匠のおじいさんの刀を借りることになった。そんな大切なもの借りていいのか、手渡された時、めちゃくちゃ震えました。
「咲々芽ちゃん、必ず生きて帰ってきてね」
『.....っ.....』
「私、ここから誰かを送り出したことないんだけど.....他の育手の人達もこんな気持ちだったのね.....」
『！』
見送りしてくれる師匠の表情は、泣くのを我慢している顔だった。その表情に私は、決意を込めて真っ直ぐと師匠を見る。
『必ず帰ってきます！』
「うん、待ってるわ」
こんなにも美人な人を悲しませるなんて事できない。
私がここから最終選別に行ってる間、師匠のご飯がものすごく心配だけど......。近所のおば様方、後は頼みます。
『それでは、行って参ります師匠！』
「行ってらっしゃい、咲々芽ちゃん」
『はいっ！』
腰にある刀をしっかりと腰にさしたことを確認する。
何かあっても(鬼と遭遇してしまっても)、すぐに対処できるように。師匠から借りた薄き桃色の羽織もしっかり羽織ってる。
『(よし、行こう)』
私は歩きだした。
少し歩いてから、師匠のいる方を振り返り手を振った。まだ家の前で見送ってくれている師匠に「行ってきます！」と声を上げて、再び歩きだした。
『変な事に巻き込まれないといいなぁ.....』
その数時間後に誘拐未遂が起こってしまうのだが、持ち前の行動力及びスキルで難なく切り抜けるのだが、今の私は持ってきたお握りを食べることを楽しみに歩いていたのだった。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2023年4月15日 14時
