排球部エースは転生少女《６》 (ページ25)

今日:13 hit、昨日:44 hit、合計:22,924 hit

◇ラストクライムページ25

美園湖羽side

不思議チャンは無事にスタートに間に合ったそうで奥山達と共にはぁ....と息をついた。吸水ポイントを通過、ニチームが先頭を走っているという連絡が来て、しばらく。今か今かと尽八達を待っていれば......、

ワァァァァァ.....!!!

下の方から歓声が聞こえてきた。
誰かが登ってきたのが分かって、来るのが誰かもわかる。

『歓声....聞こえてきた.....』

先程、奥山君からの情報で総北の小野田が拍車してしまった情報はもらった。ここまでは原作通り進んでいる。スプリントは総北の迅君、鳴子君、箱学の泉田の順でとった。小野田が総北に追い付き、チームを引っ張ることに間に合ったのなら、巻ちゃんは尽八を追いかけている。

「だい.....大丈夫だよ、ね.....」

『......信じるしかないよ』

勝ち負けじゃなくて、尽八と巻ちゃんが最後の走りをラストクライムを出きるかどうかが一番心配だ。本当は勝ち負けも大事だけど、私的には原作でもみたあの心が震えるクライムがみたい。

「おい！来たぞ！！」

「箱学と総北の一騎討ちだっ！！！」

「箱学っ！」

『尽八と巻ちゃんだ！！！』

乗り出さないように道路の下の方を見る。
長く先が見えない道路にゆらりと写った、人影。
一人はあの日見た、私が惚れた走りをする東堂尽八。もう一人は長い髪を左右に揺らし、個性的なダンシングをする巻島裕介。どちらも譲らない走りを見せる二人。私達の前を通過すれば、どちらかが山岳リザルトをとる。.....勝負の決着が付くのだ。

バァァァァァ______！！

下から感じるプレッシャー。「ゴールは譲らない」と「お前には負けない」と走りから伝わってくる。離れていても伝わってくるんだ。見ている人を惹き付けるロードレース。観ているだけで心が燃え上がるように熱くなる。

『!!!』

「っ....!!」

「ｯ来ました！！」

見える影が、二人が、近付いてくるのがわかる。先程よりも歓声は大きくなり、いよいよ山岳リザルトの地面にひかれる緑色のラインを目指して、二人は走ってくる。ドキドキと心臓が脈打つ。目の前の光景から目を離さないように。見逃さないように。

3、2、1....。
さん、に、いち.....。

そんなカウントが聞こえてきたように感じた。
一瞬のような、けれども長い時間のような.....。

　