11*(理由) ページ35
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乾かしたばかりの髪はくるりとゆるく。少し癖毛。
その髪をブラシで梳かしながら、鏡越しに見えた神威。
何を思ったか動きを止めて黙ったまま睨まれるから、「…何だよ」と、神威が溜まらず言う。
神「…何だよ」
貴「別に?」
貴「黒葉君。帰ったの?」
神「気に入った?」
貴「別に」
神「エリカかよ。……」
貴「…ねぇ神威」
貴「神威って髪の毛綺麗ね」
貴「手入れとかしてるの?」
神「唐突」
神「…別に」
ふわり。ソファに座る神威の後ろに無理矢理入り込んだと思ったら、自分のモノの様に髪を梳かしはじめる。
心地良く少し懐かしい感覚に、神威は身を任せた。
神「Aも充分に綺麗だよ?」
貴「大事にしてるもん」
神「…そぉかい」
一通り溶かし終えた所で、Aは神威の隣に座りなおす。
貴「ねェ神威」
神「なァに?」
貴「用事って何?」
神「用事?」
神「…あァ。無いよ」
貴「えェ?」
神「まァ強いて言うなら、」
神「なんか無性にAの顔見たくなったんだ」
眠気に誘われてか、神威の口調はゆったりとし始める。
それを悟ったAも、神威の言葉に深い意味は無いのだと聞き流した。
貴「…ねェ、神威」
神「なぁに?」
貴「髪。何で伸ばしてるの?」
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貴「私はね」
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貴「真似なんだ」
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神「…真似って」
神「誰の?」
ゆるり。触った髪は指の間から抜けていく。
"随分伸びた"。と、脳裏に浮かぶ人と比べた。
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貴「…好きな人。かな」
時刻は日付が変る少し前。
神威は虚ろに聞こえた言葉を夢だと思いたくて、ソッと瞼を閉じた。
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作者名:み子 | 作成日時:2016年7月26日 20時