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銀「鬼の副長とも在ろうお方が」
銀「聞いて呆れるねェ」
雨が降り始めた頃に戦は終わり、パトカーに乗せられ銀時はガラス越しに雫をなぞる。
土「…絶対にパクってやらァっ」
運転席には沖田。後部座席に土方が乗っており、車内は戦場よりもピリついている様に感じる。
沖「旦那ァ、…」
沖「紅桜って知ってやすかァ?」
銀「あァ、知ってるよ」
それを煽るように、沖田の言葉で一層に重み増した。
だが、躊躇いも無く言った銀時。
痛む体を起した土方に、沖田が問う。
沖「土方さん」
沖「アノ女の刀。ありやすか?」
土「あ、あァ」
座席の下から取り出しソレを銀時に渡しすと、銀時は受け取るなり懐かしみながら見つめて刀に触れる。
銀「…まだこんなもん持ってたのかよ」
花の形をした鍔の刀は、何十年も昔に自分のモノだったもの。
今では自分よりも長い年月に渡り使っている奴がいるが、当の本人は今だに借り物だと思っているのだろうか。
それは、少し嬉しくもあった。
銀「君ら、…」
銀「アイツに会ったんだァ?」
沖「えェ、まァ」
外は土砂降りで、車内での声は聞こえにくい。
そんな中、土方の煙草の煙はハッキリと見える。
土「…なァ。もしかして」
土「どうにも可笑しな奴だと思ったが」
沖「気づくの遅ェよ。流石土方だな」
ぐうのねも出ず、変わりに一段と煙を肺に入れた。
なんどかその行為が行われると、どこか心此処に在らずの銀時が話し出す。
銀「昔っから、…昔っからだ」
銀「Aは寝てる時でさえも見てねェと」
銀「消えちまいそうな奴だったよ」
銀「こっちの気持ちを汲み取るのが下手でなァ」
銀「大人しく守られてくれねェ」
銀「いや、守らせてくれねェんだ」
思い通りにならなかった腐るほどある記憶に、うんざりとまた、雨を眺めた。
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作者名:み子 | 作成日時:2016年7月26日 20時