未来の札 二枚 ページ48
「来年は私が挑戦者だからね! 覚悟してて!」
「何言うとるん。ウチやから」
なにおう! と千早ちゃんが返し、二人はやいのやいのと言い合う。
『どっちにしても、私は待ち構えているよ』
そう率直に言えば、二つの視線がこちらに向けられた。
闘志を感じる……!
しかし私はたじろぐこともなく、ふふ、と笑っておく。
「これがクイーンの笑み……!」
「余裕があってよろしいなぁ……?」
『少し怖いよ二人とも』
じりじりと迫ってくる雰囲気が並のものではなかった。何者だ、貴方達は。
迫る千早ちゃんと詩暢ちゃん、後ずさる私というおかしな構図が繰り広げられる所に、声が掛けられた。
この声は、
「A、早く帰ろう」
『あ、うん! じゃあ千早ちゃんと詩暢ちゃん、またね』
二人に手を振り、私はその声の主の元へと歩み寄った。
声の主とは国見 英。高校時代から付き合っており、すなわち婚約者である。
今日その彼は大会の会場にいたものの、試合を実際には見ていない。その理由は「ずっと正座は辛い」だそうで。
なんとも彼らしい。
無意識のうちに笑っていたのか、何? と言われた。
『私、幸せ者だね』
「どうした突然」
『かるたをずっと続けられて、国見君とも一緒にいられて』
私が言い終わる前に、頰を抓られた。
『いひゃい(痛い)』
抗議をすれば、すぐに解放される。
「名前。元に戻ってる」
『あ、以後気を付けます』
下の名前で呼んで、と言われたのはもう大分前だ。なのに癖みたいに中々抜けず、よく注意される。
「うん。
今日さ、またカメラ増えてなかった?」
話が変わってくれた。そしてそれは私も思っていた事だった。
『詩暢ちゃんは有名人だからね。注目度が高いんだよ!』
「ふーん (それはお前もだよ)」
『どうかした?』
「……俺としては穏やかじゃない」
やや不機嫌そうな表情に、私は首を傾げる。
「今日のだって、テレビで流れてただろ」
しかも全国、とさらに不機嫌さが増す。そこで何となく理解した。
『そんな心配する必要ないよ。というか、違和感がある』
「はぁ?」
『マリッジブルー?』
「違う」
再び頰を抓られる。私の頬はお餅じゃない。
「A」
手を離した英君は、私の名前を優しい声色で呼んだ。
「瀬をはやみ、って言っても、離れないけど。何があっても一緒だから」
『二度目のプロポーズですか?』
「そんなもん」
二人の手は、しっかりと繋がれていた。
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藍原(プロフ) - 返信が遅れてごめんなさい! 読みやすいと言って頂けて本当に嬉しいです(^^) コメントありがとうございます!! (2019年4月10日 20時) (レス) id: 29ee75d256 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずみかん(プロフ) - すごく面白かったです!すごく読みやすくて、楽しく読まさしてもらいました! (2019年3月19日 10時) (レス) id: 0f93b089e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍原 | 作成日時:2018年2月6日 18時