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結局、実家の方にある公園やよく行くお店、すれ違った知り合いなどに聞いても姉は見当たらなかった。
「どこ行ったんだよ…。」
姉が居なくなることなんて初めてで動揺が隠せない。
どこかに行くにしても基本的にはマネージャーさんが一緒だったし、本当にプライベートなら僕に電話をしてくれる。
姉から電話があれば何か用事があるんだと迎えに行くので言葉が無くても伝わるのだ。
なのに僕にすら連絡がなく、マネージャーさんすら知らないで。
心当たりのある場所はほとんど探した、でもいなかった。
だから僕はがむしゃらに、街を走り回って姉を探すことにした。
そう、自分の仕事すら忘れて。
「天月！！！」
「そらる、さん…？」
そらるさんの大きな声を聞いたのはもう日が落ち始めた頃だった。
朝会った時の眠たい顔はどこへやら、焦った表情で僕に駆け寄ってくるこの先輩はいったいどうしたと言うのだろう。
もしかして、今朝姉を見掛けてないか聞いたから、見つけてくれたのかもしれない。
そう思って僕はそらるさんに駆け寄った。
「姉ちゃんみつかったんですか！？」
「姉ちゃ…いや、お前の姉ちゃんはまだ見掛けてないけど。」
「そう、ですか……。」
「そうじゃなくて…。お前仕事、今日リハだろ。
スタッフさんから天月が居ないってめちゃくちゃ探されてるぞ。」
忘れてた。姉を探すことしか頭になかった。
自分の仕事を疎かにしてしまい、そらるさんが探しに来てくれたのか。
姉に合わせる顔もない。
探しても見つからない、自分の仕事も満足にできない。
あぁ、ダメだな。だから姉は目の前から消えてしまったのだろうか。
「朝ちゃんと聞けなくてごめんな。姉ちゃん、どうした。」
下を向いて何も声を発せないでいると、そらるさんが頭を撫でながら優しく声を掛けてくれた。
姉とは違いふわっとしてないし、不器用に力の加わるなで方。
でも、なんだかあたたかかった。
「そらるさん、姉ちゃんが……」
声がこもりながら、それでもこの人に頼っていいんだって安心感から口から漏れる。
どうか縋らせて、姉を僕に返してください。
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作者名：くま | 作成日時：2023年1月16日 21時
