【歌い手】頑張りすぎな姉の話【天月】 (ページ8)

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それから暫くして僕は姉の家を出た。
夕飯は各自好きなものを、それが僕らのいつもだ。

「あまちゃん…。」

「まふくん、」

最寄り駅の近く、そこには先程空港で会った友人がいた。
人集りが苦手で電車は嫌いなのに、駅の近くにいてくれたのか。

友人は控えめな声で僕を呼んでくれた。

「あまちゃん、さっきお姉さんといた時、声掛けたら嫌な顔してたよね。
声かけちゃってごめんね。それだけ伝えたくて……。」

「ううん、僕こそ嫌な顔してごめん。
姉ちゃんのこと良くない目で見る人が多くて、つい。」

親友と呼べる彼は、こうして僕のことを気にかけてくれる。
一瞬しか顔に出てないつもりだったんだけどな。

こういう所が好き。

僕だけじゃなくて、普段から周りに目を配らせて、皆の中心にいる。
僕もこうやって出来たら、姉を少しでも楽に出来るのだろうか。

「あまちゃん？」

「あ、ううん、なんでもないよ。夕飯食べた？
まだならラーメンでも食べに行こうよ、折角だし奢るよ。」

「本当？らっきぃー！」

せめて、笑顔だけは。

誰よりもたくさん笑って、不安なんてないんだぞって。
普段からそうしてれば姉への負担も減るだろうか。