【歌い手】頑張りすぎな姉の話【天月】 (ページ28)

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「でも…だったら、あの惨状は……。」

あまりに真っ直ぐなまふくんの主張に、そらるさんは狼狽えながら言葉を放った。

僕も姉を疑いたくは無いけれど、かといって状況を良くする何かは浮かばない。
不安な視線で姉と友人たちを往復することしか出来なかった。

「まず……お姉さん、Aさんに意見を聞きましょう。」

「意見ったって、意思の疎通は…」

「出来ますよ、そらるさん。
言葉が分からないだけで、意思の疎通は可能です。

……僕は、あまり得意じゃないかもしれないですけど。でも今は天月くんもいるから。」

そう言ってまふくんは僕の手を握る。
そらるさんは何も言わずにそれを眺めていた。

まふくんに手を引かれて姉の前へ。
ソファーに座る姉と視線を合わせられるよう、まふくんは姉の前に膝をついた。

「Aさん。

今僕は天月くんとそらるさんから、貴方のお家が酷いことになっていると聞きました。
貴方は…きっと、助けを求めたかった。けれど、僕が上手にお話を聞けなかったんですよね。

ごめんなさい。もっと早く聞いてあげたかった。
今、困っていると知って、僕はあなたが助けたい。

どうか伝えられる範囲で、
わかる範囲で、教えてください。
そして、助けさせてください。」

真っ直ぐに、姉の目を見てまふくんはゆっくりと伝える。
姉は困惑しながら、けれどまふくんが何かを伝えようとしていることは伝わり、僕の方をちらりと見た。

僕はそれに笑顔でゆっくり大きく頷いた。
この人は悪い人じゃない。悪いことは言っていない。
それだけは伝えられる。それが笑顔だった。

僕の顔を見て、少し表情を緩める姉。

そうか、僕の友人は、助けてくれるんだ。