【歌い手】頑張りすぎな姉の話【天月】 (ページ23)

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「天月、なんか…様子がおかしい。」

そらるさんにそう声をかけられたのはチャイムを鳴らしても反応がなく、うーんと頭を抱えてから既に5～10分が経過した頃だった。

「そりゃ、おかしいのは分かってますよ。
姉ちゃんがこの家に行って怪我をしてたんだから人がいないことは無いだろうし。」

「いや、そうじゃなくて…。匂いが。」

スンスン、と鼻を鳴らすそらるさん。

僕も真似をして匂いに集中するけど、特にこれといって違和感はなかった。
庭の土の匂いと、木々の匂い。夕飯の支度でもしていたのか、少し醤油と味醂の甘めの匂いもする。

「え、気付かない？血の匂いだよ。
お前の姉ちゃんからした匂いに似てる。」

「え、姉ちゃんの匂い？」

全然いつも通りフローラルないい香りだったよ？
そらるさんってそんなに鼻が利くの？？

…って、血？！

「え、と……どういう…？」

「なんて言うんだ、血の匂い。血なまぐさいというか。しない？」

「しませんよ、怖いな。」

まふくんの話では姉はかなりの出血だったみたいだから確かに血の匂いがしたのかもしれない。
まふくんが洗ってくれたようだから僕は気づかなかったけどね。

でもそれがここでするってのはおかしな話だった。
だって出血していた姉はここにはいない。

「…家の中、まだ血を片してないのか、別の出血者がいるのか。」

ぼそりと呟いたそらるさんのソレは、多分的を射ていた。

そして多分、後者が当てはまる。

「行きましょう！」

もしそうなら数度鳴らしているチャイムに対し声すらあげられない状態だということだ。

僕らは急いで門を潜り、玄関の扉に手をかけた。

……が、

「あかない、よな。」

「そらるさん！庭からリビングに入れます！」

玄関の扉は閉まっていた。
当たり前と言えば当たり前なのだが、鍵がかかっていたのだ。

リビングから庭に繋がる大きな窓なら、もしかしたら。
そう思い僕らは庭へと回った。