【歌い手】頑張りすぎな姉の話【天月】 (ページ18)

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まふくんから事情を聞く。

姉とバッタリ会ったこと、ガラスの入った傷口のこと、鼻歌で仲良くなったこと、怪我の手当をしてくれたこと。

｢じゃあ、まふくんも姉ちゃんの怪我の理由は分からないのか。
……怒鳴ってごめんね、手当してくれてありがとう。｣

「ううん、お姉さん探してたの知らなかったとはいえ、連絡も入れずに僕の家にあげちゃってごめんね。」

取り乱してしまい、しかも大きな声を出してしまったなんて大恥だ。
親友に謝りながら姉をちらりと見れば、何だか気まずそうにしていた。

しっかりとまふくんの腕に掴まっているあたり、きっと傷口が痛むのか。
重心を少しでももう片方の足に寄せてるんだろうな。
僕に心配かけたくなくて気まずい顔なの？それとも……。

「…ねぇ、姉ちゃんと会ったのって向こうのコンビニに行く方って言ってたよね？」

「ん？うん、あっちの……」

「そう……」

あっち、とまふくんが指を指した方向は僕らの実家がある方。
つまりあの母親が住む家の方角だ。

ガラスの怪我……そういえば母親はタバコを吸う人間で、灰皿はガラス。
そうでなくても家の中にガラス製の物は沢山ある。

｢姉ちゃん、おうち、行ったの？｣

少し声が震えてしまった。
どうして、そんな気持ちを抱えて、けれどそれは確信に近く。

僕らの苗字をメモ帳に書いて、家のイラストを描く。
姉にそれを見せて家の方向を指さし、もう一度同じことを聞く。

嫌な予感は、当たるものなのだ。

こくりと、姉は小さく頷いて肯定した。