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まふまふside
握りすぎて白くなった手に目をやると、ふわりとした感覚が頭に降ってくる。
見上げれば、もう一方の手で僕を撫でているお姉さん。
僕は今どんな顔をしていただろうか。
そう考えてしまうほど、僕のことを心配するような顔で。
痛みを噛み殺して震える手で撫でてくれるこの手はなんて暖かいのだろう。
思い浮かぶのは親友の顔だった。
いつも底抜けに明るく、努力家の彼は。
きっとこの姉を見て育ったのだと。
｢…痛かったですよね、終わりました。｣
傷口をぬるま湯でよく洗い終わって声をかければ、スカートを握っていた手から力が抜けるのが見えた。
今度こそ手当をしよう。
できる限り新品に近い清潔なタオルを出してお姉さんの足を拭き、出血部位を圧迫する。
｢…っ｣
｢止血するので我慢してください。｣
風呂場の椅子に座ってもらったまま、傷口を圧迫止血。
初めは痛そうだったけれど、圧になれたのかお姉さんの力は少しずつ抜けていった。
それでも痛いことには変わりないだろうけどね……。
なるべく笑顔を保てるよう心掛けながらお姉さんの顔をのぞき込む。
すると、そこには困ったような笑顔をうかべたお姉さんの顔があった。
「なにか、困らせましたか？」
そう聞いても伝わるわけはなく。
なんだか悪いことをしている気分になってしまうのはどうしてだろう。
ただ、この人には笑っていてほしいな。
それは、親友の姉だからなのか、綺麗な女性だからなのか。
「〜〜♪」
ただ、笑って欲しくて。
気付いたら僕は、またメロディを口ずさんでいた。
1度驚いたような顔をするお姉さん。
けれど次の瞬間にはふにゃっと笑い、そして重ねるようにリズムを取り音を紡ぐ。
元の曲なんてなく、ただ今思いついた曲を口ずさんだのに。
彼女の口から出た音階はとても心地よく、僕の口ずさんだそれとマッチしていた。
「〜〜♪」
「〜〜♪」
お風呂場に響くメロディは、手元の痛々しいケガとは全くの無縁で。
ひたすらに心地の良いものだった。
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作者名：くま | 作成日時：2023年1月16日 21時
