【歌い手】頑張りすぎな姉の話【天月】 (ページ12)

今日:8 hit、昨日:20 hit、合計:13,061 hit

12 ページ12

･

「成程ね、じゃあ俺もお前の姉ちゃん一緒に探すからさ。」

だからそんな顔すんな、そらるさんはそう言って撫でてくれていた手を降ろした。
少し寂しく思いその手を見つめれば、顔へと近づいてくる。

「ほーら、笑え。姉ちゃん見つけた時にそんな顔してたら心配されるぞ。」

「いひゃいれふ、そあうさん。」

ほっぺをぐにっと引っ張られたので抗議する。
不器用な優しさがひどく心地よかった。

その後、そらるさんに仕事のことを伝えられ、スタッフさんに連絡を入れる。
姉のマネージャーさんからは直接電話が来るのでメッセージアプリを確認していなかった。
自分の仕事を疎かにしてしまうなんて情けない。
そうしょぼくれていたら、またそらるさんに頬をつねられた。

「一旦天月の姉ちゃん家の方行こうか、すれ違って帰ってるかもしれないよ。」

「姉ちゃんのマネージャーさんが居るはずなんです、連絡が無いので帰っていることは無いですね…。」

「そう、でもほら、そっちに向かってるかもしれないでしょ？」

確かに僕の家や実家の周辺はずっと僕がウロウロしてたわけで、この辺にいるならすれ違って居ないのはおかしい。
そらるさんの言うとおり姉の家の方向を目指すことにする。

方角的にはまふくん家の方。

昨日わざわざ僕を訪ねてくれた親友は、今日も引き籠って作曲しているのだろうか。
まふくん家のマンションの前を通る時、そんなことを思っていたら自然と視線がそちらに向く。

「なん、で……」

向けた視線の先には、先程までずっと探していた、姉の姿。
そしてその隣にはよく知った、親友の姿があった。