ただ、愛がほしいだけ【マサイ】 (ページ15)

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あの事件からしばらく経った頃。

敬語もだんだん解れてきて

ごはんを食べに行ったり、

お互いの家で自炊したりと、距離を詰めていた

…と思う

今日はAさんの家でごはんを作ることになっている

いつも通り料理をし、向かい合って座った

「「いただきます」」

ひとくち、ふたくち、食べ進め、うまっ、と言葉が溢れる

いつものこと

いつものことなのに

Aさんは違った

マ「…どしたの？食欲ない？」

まだひとくちも食べていないAさん

いつもは笑顔でごはんをほおばっているのに

「…ちょっと、聞いてほしいことがあって」

マ「なに？」

「……付き合ってほしい、って言われたの」

殴られたような痛み

思わず顔が引き攣る

心拍数が一気に上がっていく

「…その人、前に関係持ってた人なんです」

……そうなると話は変わってくる

身体で繋がっていただけの男女が幸せになれるのか…？

「会わなくなって寂しくなった、好きなんだって気付いた、って言われて…」

マ「…返事したの？」

「…まだ。一回そういう関係になっちゃった人だから、信じていいのかわからなくて」

確かに、信じるのは難しいかもしれない

正直俺も不安だ

マ「…デートとか、何回かしてみたらいいんじゃない？」

付き合ってほしくない

けど、俺が決める権限はない

マ「実はいい人ってのもあるかもしんないから…ね？」

「……わかった、デートしてみる」

このアドバイスに後悔することになるかもしれない

でも、Aさんが幸せになれるなら

それは俺の幸せだ

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