36.ab ページ36
佐久間から託された愛しい人の頭を撫でる。
可愛い。
本当に愛おしく思う。
だけど、あなたは目を開けた。
佐久間の膝では頑なに目を閉ざしていたあなたが、俺の膝の上で目を開けた。
....そうか、やっぱり佐久間は特別なんだね。
嫌でも実感できてしまう、あなた本人の口から聞いた時よりも。
皮肉なものだね。
「舘さん....」
「お目覚めですか、姫。」
「ごめん、重いよね。」
起き上がろうとしたあなたを制したのは、きっとあなたの為なんかじゃない。
俺の我儘。
素直に我儘が言えない俺の、精一杯の我儘。
「まだ寝てていいよ。」
「俺、別に疲れてないもん。照が勝手に変なこと言い出すから....」
あなたが睨んだ先には、ふっかの服の裾をキュッと握っている照の姿。
照も反省してるんだよ、余計なことをしたって。
それでなんとなくふっかに甘えてるんだよ、わかってやって欲しい。
「....あのね、阿部。」
「ん....?」
「一回しか言わないから、よく聞いて。」
「え....ちょっと待って、メモ....」
「そんなの要らないよ。俺の独り言だと思ってくれて構わないから。」
「よく聞いてって言ったくせに....。」
「俺はね、もう阿部にキスできなくなった。阿部の想い人を知ってしまったから....というか、阿部に好きな相手がいることがわかったから。」
「そんな、別に気にしなくていいよ。」
「そういうわけにはいかないよ。俺は阿部が幸せになれるなら、自分が阿部の隣に居る必要は無いと思ってる。阿部が選んだ相手は俺じゃない、俺は阿部の恋愛の枷になりたくない。」
「枷だなんて思わないよ。....みんなからのキス、嬉しいの。愛されてる証だと思ってるから。無くなっちゃうなんて嫌だよ。ダテからのキスが無いなら、俺の手は何のために存在してるの?」
「その手は佐久間と繋ぐためにある。俺だけじゃない、ここに居る全員が阿部へのキスを封印するって決めたんだ。」
「どうして....っ!?」
「今朝、メールが来たんだ。『知ってる人もいると思いますけど、阿部ちゃんと佐久間くん両想いっぽいです。』ってね。何をどうしろとは書かれていなかったけれど、察したよ。俺達がどうするべきか、阿部にとって最善の選択が何なのか。勿論俺は阿部から聞いていたから知ってたけど、阿部が佐久間を想っていることを知らなかったメンバーは驚いてたね。」
「待って、そのメールって....!」
「あぁ、送信主は目黒だったよ。」
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まなお(プロフ) - 智子さん» ありがとうございます!のえあべ…好きなんですよ(*^^*) (2021年7月14日 15時) (レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
智子 - のえさんんが、、、本当にいいお話でした (2021年7月2日 1時) (レス) id: 6bcad947d7 (このIDを非表示/違反報告)
まなお(プロフ) - EYEさん» のえさん、阿部ちゃん、かっくんの三角関係を妄想している途中です。形になりそうだったらアウトプットするので、暫しお待ちくださいね! (2020年8月18日 17時) (レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
EYE(プロフ) - まなおさん» ほんとですか!絶対見ます!!笑 (2020年8月18日 17時) (レス) id: c74add9456 (このIDを非表示/違反報告)
まなお(プロフ) - EYEさん» ありがとうございます!!のえあべ、完全に沼でした…!!またそのうちのえあべ書くと思います。その時はまた、お付き合いくださいね!! (2020年8月18日 16時) (レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まなお | 作成日時:2020年5月15日 20時