We kiss....

14.sk ページ14

阿部ちゃんは今、何をしているのだろう。


ラウールと勉強をしているのかな。


楽しく夜食をつまみながら、学校や仕事の話で盛り上がっているのかな。


もう眠っているのかな。


それとも、まさかラウールと....


....いやいや、そんなはずは無い。


今日はキスはさせないと言ったんだ、きっと大丈夫。


大丈夫....だよね？


録り溜めたアニメを見終わって、軽く伸びをしながら時計に目をやる。


とっくに日付は変わっていて、俺もそろそろ寝なきゃ....なんて思いつつ風呂場へと向かう。


服を洗濯機に直接放り、熱めのシャワーを頭から浴びる。


この季節にしてはちょっと熱すぎる気もするけれど、こうでもしないと自分を保てなくなりそうで。


全身泡だらけにして、また熱さに耐える。


湯船に浸かると、熱さの反動でいつもの温度がとてもぬるく感じられた。


....阿部ちゃん、今何をしてるのかなぁ。


また、これだ。


よく飽きもせずに同じことばかりを気にし続けられるものだ....なんて、自分でも呆れるくらい。


それくらい、俺は阿部ちゃんのことが好きなんだね。


きっとそういうことだよね。


ぬるま湯から出て、今度は水シャワーを浴びる。


後でお腹壊したらごめんね、未来の佐久間。


今は自分自身を律するのに必死なんだ。


だって、もう無意識に外へ出て阿部ちゃんの家に向かってしまいそうなの。


会いたい、阿部ちゃんに。


明日も会えるのに、こんなに恋しいなんて....


恋がこんなに辛いものだなんて、全然知らなかった。


アニメや漫画の世界の恋はとても楽しくて、美しくて清らかなものが多い。


何より、主人公の恋が実らない作品はほとんど無い。


だから俺はずっとそういう恋に憧れてきたし、そもそもそういう恋しか存在しないと思っていた。


だけど現実の恋愛というものは、二次元みたいに上手くいかないこともあるらしく。


辛くて苦しくて、その上叶うかどうかもわからない....


ドロドロとした薄汚い感情と不確かな結末、それが俺の生きる次元での恋愛なんだってことを初めて知った。


残酷すぎる。


この世界はあまりにも恐ろしすぎる。


こうなることを知っていたら、恋なんてしなかったのに。


辛い....苦しいよ。


誰か助けて、お願い。


叶わない恋を患ったこの不憫な馬鹿野郎を、俺の親友と共に二次元の世界に連れて行ってくれ。


実ることを約束された恋愛がしたい、阿部ちゃんと。


....なんて、都合が良すぎるだろうか。

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