君色に染まる薬指 (ページ5)

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お菓子作り feet_sigkm ページ5

お菓子作り×sigkm

「川上さん！お菓子作りしませんか？」

いきなり、志賀がそう言い出した。

「…は？じゃなくてなんでいきなり？」

「これ、見てください！」

スっと差し出されたスマホには

『だれでも簡単！超濃厚ブラウニー』の文字。

「あぁ、志賀チョコ好きやもんな…」

「はい。いつか作って見たいと思ってて。」

いつもより目がキラキラと輝いていて、

まるで少年のようだ。

これはもう付き合うしかあるまい。

「ええよ。材料はあるん？」

と聞くと、キッチンの戸棚からガサッと

ビニール袋を取り出した。

「もちろん、準備は万端です！」

「……ははっ、ノリノリやんな。ほなやろか。」

「はい！」

「川上さん、チョコレート刻んで貰えますか？」

「ん、分かった。」

…とは言ったものの。

俺、料理して無くないか？

俺でもできるのだろうか？

とりあえず包丁を取り出して、刻み始める。

「………って川上さん！包丁の持ち方危ないです！」

「え、そう？間違ってる？」

志賀はぶんぶんと効果音が付きそうなほど首を振っている。

「危ないですから、私変わります…！」

ひょいと包丁を抜き取られ、

たちまち俺の仕事は無くなった。

何もすることがない。暇だ。ならば。

「じゃ志賀、味見担当するから呼んでね。」

「ふふ、もう。分かりました。待っててください。」

出来ないのなら退いていた方がいい。

志賀はなんでも作れる。しかも美味しく。

俺はパインとじゃれて待つ事にした。

「川上さーん味見を…って、もう。」

パインと待っているはずの川上さんの所に、

出来たてのブラウニーを持っていくと。

そこにはエプロンを着たまま床で寝ている川上さん。

「ほら、川上さん。ブラウニー出来ましたよ。」

そっと揺さぶって起こすと

「ん…えーにおいする…あーして…」

とむにゃむにゃ言って寝転がったまま口を開けた。

「もう、しょうがない人ですね…はい、どうぞ。」

「………めっっっっっっちゃ美味い。やっぱ天才。」

「嬉しいです。ほらまだまだありますから、どうぞ。」

私が料理するようになったきっかけは、

この川上さんの笑顔を見るためだ。

もっと、もっと。

貴方の笑顔を、私が作り出せればいいな。

ひたすらに、そう思った。