６雅紀 ページ6
「もっと湯を沸かせ！
清潔なサラシをじゃんじゃん持って来い！」
感染予防として
白い布で鼻から口、顎までしっかりと覆った城島が
助手の医生に檄を飛ばしたとき
「先生、これをお使い下さい。」
と
涼やかな声がして
城島の目の前に真っ白なサラシが差し出された。
「おっ、すまない。」
城島が
ふり返るとそこには
城島と同じように白い布で鼻から下を覆い
白い割烹着のような服を身につけた少年が立っていた。
ほっそりとしたそのたたずまいは
力を入れて抱き寄せれば
折れてしまいそうなくらいに儚げな様子だ。
顔の半分以上を白布で覆っているので
表情ははっきりと分からないが
大きな黒い瞳は
クルクルとよく動き明るい光を帯びている。
不思議なもので
この少年の姿を見ただけで
城島は
ふわっと心が軽くなるのを感じた。
そして
殺伐としたこの施薬院の中に
さぁっと
涼しい風が吹き込んできたようにも思えた。
布に隠れて見えないが
にやっと笑ってから城島は
「雅紀殿。」
と、その少年に話しかけた。
そう、この少年こそ
櫻井帝に分厚い報告書を作成し提出した
藤原北家の御曹司で
最強追捕使と噂の高い潤雅(ひろまさ)の一人息子、 雅紀である。
「そなたは当直明けのはずだ。」
城島が下から睨むようにして
強めの口調で言うと
雅紀は
小首をちょこんとかしげて
「でも、こんなに患者さんがいっぱいだから
人手がいるでしょう？」
眼だけでにこっと笑った。
「それはそうだが
ここに詰めかけて来ている患者たちは
みな、ひどい疫病にかかっている。
もし、雅紀殿が伝染りでもしたら
ワシは潤雅殿に顔向けができん！
どうぞ、お帰り下さい。」
城島が語気を強めて叱りつけるように言っても
雅紀はニコニコと笑うばかり。
「医生の皆さんと同じように
鼻と口も覆ってますし
吐瀉物がかかってもこの服を着てますので
大丈夫です。」
小さな女の子がするみたいに
平服の直衣の上から来た白い着物の裾をつまんで
ちょっと軽く膝を折ってみせる雅紀は
誰がどう見ても可愛い。
城島でさえ
雅紀の可愛さに言葉を失い
一瞬、ぐっとつまってしまった。
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さっこ(プロフ) - はっしーさん！嬉しい〜！！始めから読み直して復習死出お待ちしてます^_^ (2020年9月1日 19時) (
レス) id: fedeb916ac (このIDを非表示/違反報告)
asami(プロフ) - あやかしの続編待ってました！ありがとうございます。またこの個性豊かな素敵な仲間たちに出会えて嬉しいです。雅紀様バンザイ！！ (2020年8月31日 23時) (レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2020年8月27日 23時
