５御殿医・城島 ページ5
始まりは二日前。
そぼ降る雨の中
ずぶ濡れの老爺が
熱があるのでみてほしいと施薬院にやって来た。
いつものように
施薬院に詰めていた医師や医生たちが
この老爺の濡れた着物を着替えさせ
薬湯を飲ませたり
痛む関節を湿布で冷やすなど
手厚い看護を施していたのだが
それが終わらぬうちに
1人、また1人と高熱や吐き気、悪寒症状の者がやって来た。
最初は医生たちも
「珍しく今日は患者が多いなあ」くらいに思っていたのだが
半日もしないうちに
施薬院は
体調不良を訴える者であふれかえる状況になっていた。
これはただごとではない。
すぐに病床はすべて埋まり
建物の中も
体調不良を訴える患者たちでいっぱいになった。
いや、建物の中に入れた者はまだましである。
建物の中に入れきれず
降り続く雨の中
施薬院の軒下で
もう動けないとうずくまった者もいる。
どの患者も訴える症状は同じ。
熱と頭痛に嘔吐、そして激しい下痢。
患者の中には
高熱のため神が乗り移ったように
ふるえおののき
うわごとを口走る者までいる。
これは
明らかに疫病の症状だ。
施薬院の内と外
いたる所から
うめき声とすすり泣く声が聞こえてくる。
辺り一面
すえたような吐瀉物のにおいに満ちている。
患者はどんどん増えるし
病状は全然快方に向かわない。
それほど多くない施薬院の医生たちは
休む暇無く
患者から患者へとかけずり回っていた。
そんな中
「ええい、やってもやってもキリがない！」
御典医・城島が
額の汗を拳でぬぐいながら大きな声を上げた。
「先生っ！薬湯がなくなりました！」
医生が城島にすがるように叫んだが
「わかっとる！
けど、もうないんじゃ！
すっからかんのすっかんぴんじゃ！」
城島は
ちょっとおどけるように両肩をすくめて見せた。
「じゃ、ど、どうしたら･･？」
立ち尽くす医生に城島は
「ないならないで、なんとかするんが現場じゃ！
とりあえず白湯をじゃんじゃん飲ましとけ！
塩をちょっぴり入れるのを忘れるな！
脱水にだけはならないようにな！」
ビシッと指示を出すと
重症状の患者の元へかけだしていった。
もはや若いとは言えない城島だが
患者の間を飛び回って診察・治療をこなす様子だけ見ると
そこらの医生と年がかわらないように見える。
長年、従軍戦医として
各地の血なまぐさい戦場を駆け回ってきただけはある。
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さっこ(プロフ) - はっしーさん！嬉しい〜！！始めから読み直して復習死出お待ちしてます^_^ (2020年9月1日 19時) (
レス) id: fedeb916ac (このIDを非表示/違反報告)
asami(プロフ) - あやかしの続編待ってました！ありがとうございます。またこの個性豊かな素敵な仲間たちに出会えて嬉しいです。雅紀様バンザイ！！ (2020年8月31日 23時) (レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2020年8月27日 23時
