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激しく衝突した衝撃で、私の持っていたオレンジジュースが半分ぐらい三人のうちの一人が着ていたジャケットにかかってしまった。
『あっ』
”うっわ、最悪”
『えっ、ごめんなさい』
”あ?”
見るからに柄の悪そうな男の集団。
どうしよう、怖い...
”ねぇ君、どうすんの?こいつの服、ビショビショなんだけど”
『あの、本当にごめ』
”簡単に許してもらえると思ってんの?”
なんか嫌な予感がした。
この人たち、わざと私に...。
そう思っても、怖くてただ誤ることしか出来ない私を見て、男たちはニヤニヤと笑ってこっちを見ている。
...テヒョン。
彼がトイレから早く出て来ないかとチラチラ探すけど、彼はいない。
”おい、どこ見てんだこっち見ろよ!”
『いたっ』
顎をつかまれて、無理やり顔を男に向けさせられた。
...怖い。怖くて足が震えている。
涙が出るのを必死に我慢して、ぎゅっと目をつむっていると
「おい」
声が聞こえて目を向けると、そこには見たこともない真顔で私の顔を掴む男の腕をグッと掴むテヒョンがいた。
掴んだ手を勢いよく振り落とすと
「お前らさぁ」
...これは怒っている。
いつもは甘い彼の声が、今は異様に低くて重い。
「軽々しく俺の女に手出してんじゃねーよ」
『テヒョナ!』
今にも男たちに殴りかかりそうな彼を止めようと、ぎゅっと彼の服を掴む。
男たちの顔には汗が滲んでいた。
”...け、けど、こいつの服、この女のジュースかかってビショ濡れじゃねーかよ”
「あ?」
さっきまでの怖さがまるで無くなった弱そうな集団と、目の前で鬼のように冷たい形相のテヒョン。
「調子こいてんじゃねーよ。お前らからぶつかったんだろ」
”...っ”
テヒョンがあまりにも大声で言うから、周りの目を気にしたのかさらに口も出なくなった男たち。
そんな彼らを見ると、テヒョンは急に自分の着ていたジャケットを脱ぎ、濡れた男にポイッと差し出した。
「そんな嫌ならこれでも着てろ。やる」
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作者名:Ri-a | 作成日時:2016年3月14日 12時